Agenda note注目のスタートアップ連載 #03

選挙という固いネタを扱う選挙ドットコムが月間1200万ユーザーのメディアに成長できた理由とは?【イチニ 代表取締役 高畑卓氏】

前回の記事:
排泄予測デバイス「DFree」世界5億人が抱える問題に挑み、2年で売上10倍の急成長【トリプル・ダブリュー・ジャパン 代表 中西敦士氏】
 Agenda note が注目するスタートアップ企業の戦略や狙いに迫る連載。企業を取り巻く環境が激変する昨今、変化への対応がビジネスを成長させる上で重要になる。急成長するスタートアップ企業は、そうした変化を敏感に察知し、迅速に行動することで大企業や競合企業との競争を勝ち抜いている。そこで本連載では、注目のスタートアップ企業の経営者にインタビューし、そのポイントを探っていく。

 第3回は、日本国内の選挙や政治情報プラットフォーム「選挙ドットコム」や、政治家向けネット選挙サービス「ボネクタ」を提供するイチニ 代表取締役 高畑卓氏が登場する。同氏は、Webのコンサルティング事業やデジタルマーケティング支援を経て、2013年のネット選挙運動解禁時に、政治家向けのネット選挙コンサルティングサービスである「勝つ政治家.com」を立ち上げる。その後、政党や数々の政治家をインターネットの側面からサポートし、2015年にイチニ(旧・選挙ドットコム)を設立した。

 公職選挙法が改正され、インターネット上での選挙運動 が解禁されて10年目を迎えた2023年4月、選挙情報メディアの選挙ドットコムの月間ユニークユーザー数は1200万に達し、有権者が見る選挙サイトに成長した。また、政治家の選挙活動における 広報・ネット発信のサポート、広告メニューの販売などインターネット上の活動をサポートする事業であるボネクタも好調である。今回は選挙や政治家に向けたサービスをスタートした背景と、選挙ドットコムが多くの有権者に見られるようになった戦略などについて詳しく聞いた。
 

居酒屋での出会いから選挙や政治をサポート


――選挙ドットコムを中心とした選挙や政治にまつわるプラットフォーム事業をスタートした経緯を教えてください。
  
イチ二 代表取締役
高畑 卓 氏

2005年 株式会社ジェイコス設立、代表取締役就任。法人Webコンサルティング事業を展開。2009年より政治家のwebマーケティング支援を開始し、2013年のネット選挙運動解禁時に、政治家向けのネット選挙コンサルティングサービス「勝つ政治家.com」を立ち上げる。以後、政党や数多くの政治家をサポートしてきた。2015年 選挙ドットコム株式会社を設立、代表取締役就任。ネット選挙の第一人者として、各政党・政治関連団体・自治体での講演多数。2020年 イチニ株式会社代表取締役就任。

 選挙に関わるようになったきっかけは2009 年頃、行きつけの居酒屋での出会いがきっかけです。居酒屋でお酒を飲んでいると隣で落ち込んでいる男性がいたので「どうしたんですか?」と声をかけたところ、「選挙に落選した」と言うのです。そこからいろいろと話を聞いていく中で、若い人をどうやって選挙に参加してもらうかという話題で盛り上がりました。

 私は法人向けのWebマーケティング会社を経営し、ホームページ制作やプロモーションのサポートなどをしておりましたので、その選挙に落ちた男性からアドバイスしてほしいと言われたのです。

 それまで、私は政治や選挙にあまり興味がなかったのですが、落選して落ち込んでいる人を目の前で見て、いろいろと話していくうちに真面目な政治家という存在は 国や地域を動かし、法律をつくるのは非常に重要な役割だと思うようになりました。それなのに、日本の投票率は低いのが現実です。私なりに何か貢献したいと思うようになりサポートを始めました。

 そして4年を経た2013年に、その方がもう一度選挙に出られるという事になり、本格的に選挙に携わることになりました。

 当時は、ちょうど公職選挙法が改正されるタイミングで、インターネット上での選挙運動、いわゆる「ネット選挙」が解禁され話題になっていました。

 ネット選挙をサポートするために調べたところ、選挙には公職選挙法や政治資金規正法という法律があることを知りました。それらのルールを守った上でどのような表現ができるかを試行錯誤する中で、その方のホームページやPR動画など をつくりました。すると、その動画などが大きな話題になって、絶対に勝てないと言われていた市長選でジャイアントキリングを起こすことができました。

 それが、今の川崎市長である福田紀彦さんです。私からすると、行きつけの居酒屋で会った友人の“ふくちゃん”のままなんですけどね(笑)。

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