TOP PLAYER INTERVIEW #53
「マーケティングがしんどいな」と思っている人へ【シャープ公式X運用担当 山本隆博】
現在、83万フォロワー超の人気を博しているSHARP(シャープ)のX(旧Twitter)公式アカウント「SHARP シャープ株式会社」。2011年5月にアカウント開設以来、12年間にわたって“中の人”をつとめる「シャープさん」が、シャープマーケティングジャパン デジタルマーケティング部の山本隆博氏になる。2023年9月に初の単著となる『スマホ片手に、しんどい夜に。』を出版した。今回はSNS運用において山本氏が大切にしている考えやスタンスについて詳しく聞いた。
「広告の響かなさ」の実感からたどり着いた「半歩はみ出た発信」
―― X(旧Twitter)公式アカウントの開設から10年以上が経過しています。現在、Xはシャープ内でどのような位置付けや役割で運営しているのでしょうか。
シャープは規模が比較的大きい企業なので、X(旧Twitter)がマーケティング活動の中核を担うことは決してなく、各家電のマーケティングや広告施策を後押しするという形で関わることが多いです。
ただ少なくとも10年前に比べると、X(旧Twitter)そのものも、私のアカウントも巨大になっているので、ある程度ほかの広告ツールとの関連性をプランニングしたり、企画内容を考えたりすることが増えてきています。
シャープマーケティングジャパン デジタルマーケティング部
山本 隆博 氏
フォロワー80万を超える、シャープ公式Twitterの運営者。テレビCMなど、マス広告を担当後、流れ流れてSNSへ。ときにゆるいと称されるツイートでニュースになることが日常に。企業コミュニケーションと広告の新しいあり方を模索しながら、日々Twitter上でユーザーと交流を続けている。主な受賞歴:2014年大阪コピーライターズクラブ最高新人賞、第50回佐治敬三賞、2018年東京コピーライターズクラブ新人賞、2021 ACC ブロンズ。2019年にはフォーブスジャパンによるトップインフルエンサー50人に選ばれたことも。ウェブトゥーン(縦スク漫画)創作プラットフォーム『コミチ』でコラムも連載中。初の著書にシャープさんのSNS漫画時評『スマホ片手に、しんどい夜に。』(講談社)がある。
山本 隆博 氏
フォロワー80万を超える、シャープ公式Twitterの運営者。テレビCMなど、マス広告を担当後、流れ流れてSNSへ。ときにゆるいと称されるツイートでニュースになることが日常に。企業コミュニケーションと広告の新しいあり方を模索しながら、日々Twitter上でユーザーと交流を続けている。主な受賞歴:2014年大阪コピーライターズクラブ最高新人賞、第50回佐治敬三賞、2018年東京コピーライターズクラブ新人賞、2021 ACC ブロンズ。2019年にはフォーブスジャパンによるトップインフルエンサー50人に選ばれたことも。ウェブトゥーン(縦スク漫画)創作プラットフォーム『コミチ』でコラムも連載中。初の著書にシャープさんのSNS漫画時評『スマホ片手に、しんどい夜に。』(講談社)がある。
――X(旧Twitter)における企業アカウントの中でトップの人気を誇るアカウントだと言っても過言ではないと思います。ここまでフォロワー数が増えたことや、企業アカウントとして有名になった理由はどこにあると分析していますか。
ひとつコツがあったとすれば、どんなときも発信を止めなかったことです。普通、世間に対して不都合なことが起きたり、会社が不調だったりすると、どうしても公式アカウントからは発信を控えることが多いと思います。
しかし、世間からネガティブな目が会社に向けられているときも、注目が集まっていることに変わりはないので、私は逆にチャンスだと捉えています。また、ここに企業がSNSアカウントを持つことの“意義”があるとも考えているので、そのときはむしろコミュニケーションを取るために踏み出そうとしています。
ただ、私は発信を継続すべきだと思っていても、会社としての判断がどうかというと微妙かもしれません。後から怒られる可能性は十分にありますが、少なくとも普段からXを通して、会社の“軒先”に立っているのは私なので、そのときに何をすべきかは私が一番よくわかっていると思います。
――日々のXでの投稿は、どのようなことを意識していますか。また、顧客とのコミュニケーションにおける山本さんの考えを聞かせてください。
前提として、企業の言いたいことを世間の人は聞く義理がありません。もともと私はテレビCMや新聞など、オールドスタイルの広告を扱ってきて、「広告の響かなさ」を痛感していました。その後、デジタルやWeb広告の領域にいくと、そこには広告そのものが嫌われているという状況があります。
そうした中で、どうすれば世間やお客さまに広告を届けることができるのかを考えました。そこで有効なのは、「SNS上で世間と企業の間という立ち位置でコミュニケーションを行うこと」ではないかという仮説にたどり着き、今はアカウント名(会社名)である「SHARP シャープ株式会社」から半歩はみ出したスタンスで発信しています。
会社から半歩はみ出ている分、自社を客観的に見ることができますし、それは同時にお客さまに半歩近づくことにもなります。SNSではそのスタンスでさまざまなコミュニケーションを取ろうと考えています。
「いいね」や「コメント」をいただくことも多いですが、正直そこに戦略はありません。Xにいる人が、運よく聞いてくれて、運よく返事をしてくれているわけで、言ってみれば、宝くじで当たったようなものです。こちらとしては、わざわざ反応してくれた人を無視するなんて考えられません。それは、当たりくじを引いて「いりません」と言うのと一緒です。ありがたい一人ひとりに対して、コミュニケーションを取らないほうが圧倒的に損だと思います。