日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #45

日本茶なのにクリスマス? 意表をついたサントリー特茶の屋外広告「8週間前からクリスマス」

 

毎年クリスマスのテレビCMが話題となる英国デパート


 海外では、英国のデパート「ジョン・ルイス」が、毎年クリスマス・ギフトを題材としたテレビCMを発表し、いつも話題になっている。そんな中でも今回は、2018年のクリスマス用に制作された「The boy and the piano」をご紹介しよう。このテレビCMは翌年カンヌライオンズ2019フィルム部門ゴールドなどを受賞した。

 そのテレビCMは、70歳を越えた著名なミュージシャンであるエルトン・ジョンが、自宅でピアノに向かっている場面から始まる。ジョンはおもむろに、自身の最初の大ヒット曲である『僕の歌は君の歌(Your Song)』の印象的なイントロを弾き始める。本人の歌唱による歌は続いて行き、画面では、ステージや楽屋や飛行機でバンド仲間と移動するところや、レコーディングのシーンなどが映し出される。
 
John Lewis『the Boy and the Piano × Elton John』

 ジョンは、その奇抜な髪型や服装でも知られ、また時にピアノの上に立ち観客席に向かってダイブするなどある種の奇行でも知られるが、そうしたものも描かれていく。ジョンは一時期、薬物中毒やアルコール依存症で苦しみ、自身の性愛行動にも問題を抱えていたと言われている。

 ちょうどそんな彼の半生を描いた伝記映画『ロケットマン』が公開される頃のことで、積み重ねられる様々な映像は、本人が自身の半生を振り返っている印象を与える。また、『僕の歌は君の歌(Your Song)』の歌詞のキーフレーズである「僕のギフトはこの歌。これは、君のためのもの」という部分も、印象深く聞こえて来る。

 ストーリーが進むと、ジョンはどんどん年齢を遡って行き、やがて少年時代の人前でのピアノ演奏が映し出され、最後は、3~4歳の少年が登場する(実際、ジョンは4歳からピアノを弾いていたらしい)。そこに家族からのクリスマス・ギフトとしてピアノが登場する。期待に満ちた表情で、恐る恐る鍵盤に触れる幼いジョン。そして最後の最後は、再び70余歳のジョンが映し出され、静かにピアノの鍵盤の蓋を閉める。

 そこに最後のキメのフレーズが。「Some gifts are more than just a gift(ある種のギフトは、単なるギフト以上のものだ)」だ。

 この日の幼いジョンへのギフト(ピアノ)が、その後の彼の人生を作り、数々の名曲を作り出した、というわけだろう。

 クリスマスやお正月や、時にハロウインやエイプリルフールまで、誰もが認識し特別な想いも持っているイベントは、うまく活用すれば効果的な広告コミュニケーションの素材になる。さて、今年2023年のクリスマスには、他にどんな広告コミュニケーションが生まれるのか、今から楽しみだ。
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