TOP PLAYER INTERVIEW #56

ドコモによるインテージTOBが、企業のマーケティング活動にもたらす価値とは?

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 2023年9月6日、ドコモは消費者調査やマーケティングリサーチを手掛けるインテージホールディングスに対し、TOB(株式公開買い付け)を行うと発表し、同年10月17日に終了した。この目的は、メーカーを含む様々な企業へのマーケティング支援の強化になる。

 この提携によって、どのような新しいサービスの展開が期待されるのか。そして、それらのサービスはクライアント企業にどのようなメリットをもたらすのか。ドコモのスマートライフカンパニー マーケティングイノベーション部 部長の石橋英城氏にインテージTOBの背景と今後の展望などについて詳しく聞いた。
 

インテージをTOBし、バリューチェーン全体でサービス展開へ


――2023年9月6日、dポイントの顧客基盤を活かしたデータ活用やマーケティング支援という面からインテージホールディングスのTOBを発表しました。まずは、その背景から教えてください。

 インテージは、日本のメーカーがこぞってプロダクトマーケティングの基礎データとして活用する「SRI+(全国小売店パネル調査:スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストアなど全国約6000店舗より収集している販売データ)」や 「SCI(全国消費者パネル調査:全国15歳~79歳の男女5万3600人の消費者から継続的に収集している買い物データ)」などのデータを持っています。

 日本のメーカーは「SRI+」がどう跳ねたのか、競合と比較してどう変わったのかなどを常にトラッキングしながらプロダクトやマーケティング戦略を考えたり、「SCI」のデータを参考にしながら主力商品や新商品のライン拡張の仮説を立てたりするわけです。
 
ドコモ
スマートライフカンパニー マーケティングイノベーション部 部長
石橋 英城 氏

 1993年電通入社。電通では、フリーマガジン「R25」の立ち上げ、日本政府のグリーン家電エコポイント事業の立ち上げ等、約20年に渡ってクライアントおよび自社の新規事業開発に従事。その後、ドコモ プロモーション部に出向、dポイント事業の立ち上げに参画。 電通に帰任し、電通グループのR&D部門。「Dentsu Innovation Initiative」の局長に就任。 2021年ドコモにジョイン、2022年7月よりマーケティングイノベーション部長(現職)。ドコモの会員基盤やデータによるシングルID×フルファネルでのマーケティングビジネスをリードしている。

 つまり、インテージのデータは市場調査や商品開発、データハンドリング、データ分析を含むメーカーのバリューチェーンの上流工程において非常に強い能力を持っています。しかし、日本の多くのメーカーがインテージの調査データを活用しているということは、見方を変えると、国内市場での成長余地は限られているとも言えるでしょう。

 そこで、インテージは販売サービスやプロモーション、CRM(顧客関係管理)など、バリューチェーンの下流工程にもサービスを提供し、マーケティング全体の支援を目指しています。

一方で、ドコモは約9700万のdポイント会員と70万社以上のパートナー、877ブランドの加盟店を持ち、これらに関連する大量のデータを保有しています。しかし、現在はこれらのデータを活用したマーケティングサービスは広告や販促、決済に限定されています。そこで、我々のフルファネルデータを最大限に活用し、パートナーや加盟店のマーケティングを上流工程から支援することを次の戦略としています。
   インテージとの協業によるバリューチェーン全体のトータル支援

 つまり、我々とインテージの戦略スコープは重なっており、お互いの資産や目標が相互補完的な関係にあります。インテージのデータ分析という強みと、我々が持つ膨大なIDベースの全数データを組み合わせることで、最大限のレバレッジが期待できます。

 加えて、流通小売企業が持つ接点やドコモが流通小売企業から連携してもらうID-POSデータを統合することで、マーケティングのバリューチェーン全体を支援する新しいスキームの構築ができるはずです。おそらく世界でも類を見ないマーケティングサービスが提供できると考えています。

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