TOP PLAYER INTERVIEW #57

ジュエリーブランド「4℃」は、なぜブランド名を伏せた「匿名宝飾店」を出店したのか?

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 2023年9月、東京・原宿に期間限定でブランド名を伏せたジュエリーショップ「匿名宝飾店」がオープンし注目を集めた。このプロジェクトを仕掛けたのは、ジュエリーブランド「4℃」だ。同社は、なぜ自社ブランドを伏せた店舗をオープンしたのか。「4℃」をはじめとするジュエリーの企画・製造・販売を行うエフ・ディ・シィ・プロダクツの販売促進部 販売促進課長の神島涼子氏に、匿名宝飾店プロジェクトを開催した狙いと出店後の反響などを聞いた。
 

「体験に没入してほしい」ブランドの刻印を消して出店


―― 東京・原宿のジュエリーショップ「匿名宝飾店」の正体が「4℃」と明かされ、世間では驚きが広がりました。匿名で店舗を展開した狙いを教えてください。
 
エフ・ディ・シィ・プロダクツ 第三事業部販売促進部 販売促進課長
神島 涼子 氏

 2000年に新卒として入社。「4℃」のショップスタッフ・店長の店舗経験を経て2008年販売促進部へ異動。広告、販売促進、広報などのマーケティング、プロモーション、ブランディング、デジタル関連プロジェクトに従事。2019年より現職。

「4℃」は昨年創業50周年を迎えました。多くのお客様にブランド名を知っていただけるようになった反面、SNSの普及によりイメージの固定化がされやすくなってしまいました。昔の記憶で止まっている方々へは「今の4℃」を知ってもらいたい。SNSの情報により判断されている若い世代の方々へは「本当の4℃」を知ってもらいたい。そんな想いのもと4℃の世界観やものづくりへのこだわりを改めて知っていただこうと施策の検討をはじめました。

 ただし、今回は普通に期間限定ショップを出店するのではなく、あえてブランド名を伏せることで、純粋にジュエリーを手にとって楽しんでいただく「体験の場」をつくりました。
   表参道に期間限定でオープンした「匿名宝飾店」。
   店全体を試着空間として、一部商品は購入できるようにした。23年9月8日から24日まで行われ、会期後半である20日に4℃であることを明らかにした。

 匿名宝飾店が期間限定でオープンした表参道は、4℃の発祥の地です。無名だった創業当時のように、何の情報も知られていない状況下で、純粋に「ジュエリーを楽しむ」という体験に没入してもらいたいという思いがありました。そこで匿名宝飾店で出品したすべての商品から「4℃」の刻印を消しました。来店時にお配りしたパンフレットには、「ブランド名からではなく、ものを見て、自分の指や肌のうえでジュエリーを好きになってほしい。」と記載しています。

 もちろん、宝飾店を匿名で開くことについては賛否両論がありました。それでも、「4℃」が自信を持つクオリティや着け心地を実際に体感してもらうため、社内・社外のメンバーとの議論を重ねた結果、今後100年続くブランドを目指し、良質な商品・サービスの価値を伝えることを大切に、バイアスのない体験を通じて4℃の原点でもある、こだわり続ける「ものつくり」を感じてもらいたいと開催したのが「匿名宝飾店」でした。
  
「ブランド名からではなく、ものを見て、自分の指や肌のうえでジュエリーを好きになってほしい。」という想いを具現化した匿名宝飾店にて、当日配布されたパンフレット。

――X(旧Twitter)などでは、「4℃」に対してネガティブな意見を見ることがあります。匿名宝飾店に来たお客様の反応は、いかがでしたか?

 インターネット上のコメントは、どうしてもネガティブなものがクローズアップされがちです。SNSのスクリーニング調査をしたところ、その80%以上がポジティブな声でした。しかし、一部のネガティブなご意見により、ブランドのパーセプションや購入意向を大きく左右することに危機感をもっていたのは事実です。

 実際、匿名宝飾店に訪れたお客様は20~30代を中心に約5500人以上の方に来ていただけました。来店客にアンケートを取った結果、「ジュエリーに対するイメージがかわった」79.8%「イメージがよくなった」98.6%などのお声をいただきました(エフ・ディ・シィ・プロダクツ調べ)。
  
店内では、お気に入りのジュエリーを身に付けて撮影できるフォトスポット

 4℃ではジェンダーレスやサスティナブルなブランドもデビューしておりSDGsの観点からもジュエリーづくりを行っています。このような4℃の新しい一面やものづくりへのこだわりを、実際に見て触って五感で体験することでジュエリーを身に着けた時のときめきや楽しさを知っていただけていれば嬉しいですね。

 匿名宝飾店はブランド名を伏せているため広告をほとんど出せなかったのですが、体験した方の口コミやSNSを通じてイベントの楽しい様子が広がりました。オープン後、来場者が徐々に増えていき、期間中に入場制限をかけるほど、多くの方にご来場いただくという嬉しい事態になりました。
  
「4℃」では日本人の肌に合う新しいゴールドカラーの開発なども行っており、お客様のニーズや時代に沿ったジュエリーづくりを心がけています。

 ブランドに関する情報を一切明かさないという点で途中「4℃」だと拡散されてしまう懸念もありましたが、来場者の皆様全員が「秘密」にしてくださいました。体験してくださった皆様から応援してもらえていたと感じています。

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