2024年マーケティング業界の展望 #05

トップマーケターが語る2024年の展望【鹿毛康司、佐渡島庸平】⑤

前回の記事:
トップマーケターが語る2024年の展望【西井敏恭、藤原尚也】②
 コロナによる制限が緩和されたことを感じた2023年。生成AIなどの、テクノロジーの進化がマーケティング活動に大きな影響を与えるなか、2024年における企業のマーケティング活動、マーケターの役割は、どのように変化していくのでしょうか。トップマーケターが「2024年の展望」を語ります。
 

「人の心を理解する」能力がますます必要となる

 
鹿毛 康司 氏
かげこうじ事務所 代表 マーケター クリエイティブディレクター

 生成AIとマーケティングの関係がどう変わるかに一番の関心を持っています。世の中に新しい道具が現れると、道具と人の研究が必要になってきます。たとえばSNSが登場すると、ファンとの繋がり方や拡散の研究がされる。たとえばコロナ禍にZoomが広がると、ウェビナー志向のマーケティングが生まれる。そこには道具の使い方を熟知することも必要だったけれど、道具によって変わった人の生活、人の心を研究する必要がありました。

 生成AI。誰もが簡単に最低レベルの思考やクリエイティブを瞬時に大量に手に入れることがもっとできるようになる。最初から誰もが一定基準から仕事をスタートすることができるようになる。効率化も相当進むでしょう。だから道具の進化が楽しみです。一方で、生成AIを使いこなすための「ディレクション能力、選択能力、アイデアを飛躍させる能力など」が求められます。人にしかできない「人の心を理解する」能力がますます必要になるのだろうと考えています。「生成AIに置き換えられるオペレーションの仕事」か「本来、人間がもっと注力すべき仕事か」それをマーケティングの世界で見極める大切な年になるんじゃないかと思います。
 

「応援」や「推し」は可処分時間の奪い合い

 
佐渡島 庸平 氏
コルク 代表取締役社長

 コンテンツは、作品の中に参加する余地がどれだけあるかどうか。それが、より重要になる年だと思います。すごいものを一方的に消費するのではなく、自分も「その作品が世に広がったり、面白くなっていったりする一部である」と実感できるものが、多くの人を惹きつけていくでしょう。

 アイドルの推し活動に参加して、自分ごととして趣味を楽しむ形は今もありますが、SNSの発展、生成AIのサポートによって、作ること、つながることは容易になっています。自ら作る側になって参加するという行動が広がり、日常商品にまで一般化していくと思います。

 そもそも、昔の人にとっては、山登りやキャンプも趣味ではありませんでした。それがゆるやかに変遷したように、多くの人が体験する側になりそれ自体が楽しみになることで、趣味の種類も広がっていくでしょう。

 そうなると、ライブの価値はより上がり、企業間による可処分時間の奪い合いはますます激しくなります。「応援」や「推し」の一番の形は、お金を使うことよりも時間を使うことへと、よりシフトしていくでしょう。

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