2024年マーケティング業界の展望 #08

トップマーケターが語る2024年の展望【菅 恭一、萩原 幸也】⑧

前回の記事:
トップマーケターが語る2024年の展望【甲斐 博一、佐々木 丈也】⑦
 コロナによる制限が緩和されたことを感じた2023年。生成AIなどの、テクノロジーの進化がマーケティング活動に大きな影響を与えるなか、2024年における企業のマーケティング活動、マーケターの役割は、どのように変化していくのでしょうか。トップマーケターが「2024年の展望」を語ります。
 

生活者の金融リテラシーの変化に着目

 
菅 恭一 氏
ベストインクラスプロデューサーズ 代表取締役社長

 2024年からいよいよ開始する新NISA。非課税限度額や期間、年間投資枠の幅が広がるこの新しい制度の導入によって日本政府は向こう5年間でNISA口座数を1700万から3400万に拡大させると宣言しています。これは言い換えると、資産運用を一部の意識の高い層や富裕層だけの持ち物でなく、より大衆化させていくという国の意志の表れです。一般的に日本人の金融リテラシーはかなり低いとされていますが、2024年は資産運用がより身近となり、リテラシー向上に向けた元年になると言えそうです。

 マーケティングの観点では、官民一体となった啓蒙に加えて、金融事業者はもちろん、このコンテキストを捉えたカテゴリー外の事業者の参入によるプロダクトやサービスに組み込まれた金融に生活者が触れる機会が増えることも予想されます。これによって生活者の日々のPL意識や、将来の資産も含めたBSに対する意識、消費の価値観にどのような変化が起こるでしょうか。たとえば、短期的には割高に感じられても長期的に資産性のあるプロダクト、知識や経験などの将来の自身の価値に返ってくるサービスにお金を支払う。一方で、消費財などの生活必需品はよほど自身に変化を与えてくれない限りは効率やパフォーマンスを重視した消費を行うようになるかもしれません。短年で大きな変化は起こらないかもしれませんが、中期的な変化の起点となる一年として、日本人の金融リテラシーと周辺のプロダクト、サービスの動向に着目していきたいです。
 

人が変わらず持ち続けるべき事柄は何か

 
萩原 幸也 氏
リクルート マーケティング室 クリエイティブディレクター)

 2024年はすべてのビジネスシーンで向き合うべきトピックが「生成AI」となるでしょう。あくまで人が使うツールに過ぎませんが、その進化は周知のように凄まじく、クリエイティブティの領域においてもアイデア出しから画像や映像の生成まで、これまで時間とコストをかけなければ実現できなかったことをすぐに可能にしています。もちろん権利の問題などは整理していかないとですが。

 こうした変革期には、人は変数に目を向けがちですが、定数の部分にこそ着目するのが良いと思います。これからも、人が変わらず持ち続けるべき能力や事柄は何なのかを考えて備えておくと、今後の数十年をリードして過ごせるかもしれません。さて、2023年の年初めに、こちらの記事で私は書籍を出して、個展を行うと書きました…。すいません…今年こそ…やります。生成AIを使います…。

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