2024年マーケティング業界の展望 #9

トップマーケターが語る2024年の展望【藤原 義昭、西谷 大蔵】⑨

前回の記事:
トップマーケターが語る2024年の展望【菅 恭一、萩原 幸也】⑧
 コロナによる制限が緩和されたことを感じた2023年。生成AIなどの、テクノロジーの進化がマーケティング活動に大きな影響を与えるなか、2024年における企業のマーケティング活動、マーケターの役割は、どのように変化していくのでしょうか。トップマーケターが「2024年の展望」を語ります。
 

より顧客との関係性に注力する年

 
藤原 義昭 氏
ユナイテッドアローズ 執行役員 CDO 兼 OMO本部 本部長

 昨年8月、「UAクラブ」という会員向けロイヤリティプログラムをローンチしました。顧客との関係をより深めて、長期的な関係性をつくることが大きな目的です。それは、お互いに信頼と価値を築いていくための重要な要素で、最初の取引から始まり、時間と共に深化していきます。この関係は、信頼とそれを可能にするコミュニケーションによって構築されます。今までのCRMは企業からの一方的な情報提供でしたが、今後は顧客と一緒につくり上げるものへ進化することによって、顧客はブランドをより感じることができ、長期の取引が可能になります。

 人口減少やインフレなど構造的な課題だけではなく、足元のマーケティングではクッキーレス問題など、よりネガティブな要素が多くなるでしょう。これらを乗り切るためには商売本来の顧客との関係性を今以上に見つめ直し、価値提供するために具体的な行動に移す必要があると思います。
 

“没入感”や“イマーシブ体験”が広がる年

 
西谷 大蔵 氏
サニーサイドエックス 代表取締役社長

  今年注目している動きは、「イマーシブ」です。“没入感”や“イマーシブ体験”などが大いに広がる年になります。春にはお台場で大型のイマーシブテーマパークが登場したり、来月の2月上旬にはいよいよあのAppleが満を持してXRデバイスを新発売したり、昨年できたラスベガスでオープンした「Sphere(スフィア)」をはじめ日本でも世界でもイマーシブ体験(Apple的には「スペースコンピューティング」体験)が出来る環境が大きく広がります。XR全般の、いわゆる”マスアダプション”に向けた大きな一歩となるか注目です。

 そしてこの動きを単に「イマーシブは楽しい没入体験」と捉えるだけでは、その重要性を見誤ります。今後は単なる没入体験を提供するだけに留まらず、データとコンテンツ(言い換えるとテクノロジーとクリエイティブ)を最大限に活用し、私たちを取り巻く広告やマーケティングを含めた高い体験の全体を指す、広義の意味でのイマーシブ体験を提供する視座が出てくるでしょう。消費者にとって体験価値が高く、事業会社にとっても費用対効果が高い上、マーケターから見ても先進的で面白い、そんな進んだXR体験が浸透するといいですね。

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