新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #02
YOASOBI「アイドル」が小学生からグローバルまで大ヒットできた理由、UGCを生み出す仕組みと初動が跳ねた裏側
日本の音楽・映画・ゲーム・漫画・アニメなどのエンタメコンテンツが、世界でも注目されることが多くなった昨今。さまざまなエンタメ領域の舞台裏で、ヒットを生む旗手たちの思考をnote株式会社 noteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦氏が、解き明かしていく本連載。
第1回は、いまや誰もが知る存在となったソニー・ミュージックエンタテインメントの「YOASOBI」の仕掛け人である、山本秀哉氏、屋代陽平氏が登場。2019年の結成以来、驚くべきスピードでヒットを生み出し、2020年のNHK紅白歌合戦にも出場。2023年4月12日に配信リリースした「アイドル」は、同年6月10日のBillboard Global Excl. USという米国を除くグローバルチャートで日本語曲初の1位を獲得するなど、瞬く間に日本だけではなくグローバルで活躍する存在へとなった。
前編では、YOASOBIプロジェクトのはじまりとデビュー曲「夜に駆ける」ヒットまでの道のりやプロモーション施策について紹介した。中編は、2023年に『週刊ヤングジャンプ』にて連載されている人気マンガのアニメ「【推しの子】」のオープニング主題歌としてリリースされ、海外でもヒットした楽曲「アイドル」にフォーカスし、曲づくりへのこだわりやUGC(ユーザー生成コンテンツ)への考え方について詳しく聞いた。
第1回は、いまや誰もが知る存在となったソニー・ミュージックエンタテインメントの「YOASOBI」の仕掛け人である、山本秀哉氏、屋代陽平氏が登場。2019年の結成以来、驚くべきスピードでヒットを生み出し、2020年のNHK紅白歌合戦にも出場。2023年4月12日に配信リリースした「アイドル」は、同年6月10日のBillboard Global Excl. USという米国を除くグローバルチャートで日本語曲初の1位を獲得するなど、瞬く間に日本だけではなくグローバルで活躍する存在へとなった。
前編では、YOASOBIプロジェクトのはじまりとデビュー曲「夜に駆ける」ヒットまでの道のりやプロモーション施策について紹介した。中編は、2023年に『週刊ヤングジャンプ』にて連載されている人気マンガのアニメ「【推しの子】」のオープニング主題歌としてリリースされ、海外でもヒットした楽曲「アイドル」にフォーカスし、曲づくりへのこだわりやUGC(ユーザー生成コンテンツ)への考え方について詳しく聞いた。
普段の2.5倍の活動量でUGCの創出を徹底
徳力 「アイドル」という曲は、ストリーミング配信が開始される前にアニメ「【推しの子】」第1話の先行上映として映画館で初公開されていました。デビュー曲の「夜に駆ける」に比べて、明確なプロモーションプランがあったのですか。
屋代 いえ、「夜に駆ける」の頃とそんなに変わっていないですね。
山本 ただ、好き勝手に取り組んだときは大体、すごい結果になると思っていました。「アイドル」はもともとAyaseが個人的に作品からインスピレーションを得て制作していた楽曲です。
Ayaseの大量のピュアなエネルギーが詰まった楽曲に、我々は議論を重ねながら新しいことを多く詰め込みました。音ひとつとっても比較的新しい選択肢を選んで制作し、ある程度バランスもとりつつ、面白く新しい曲ができたと思います。
YOASOBI「アイドル」 Official Music Video
ソニー・ミュージックエンタテインメント
RED エージェント部ルームY チーフ
山本 秀哉 氏
RED エージェント部ルームY チーフ
山本 秀哉 氏
徳力 異次元のヒットでしたが、特別に思い入れがあって特殊なことをした感覚はないということですか。
山本 そうですね。以前にも似たようなテイストの楽曲をAyaseが制作していたのですが、いまYOASOBIとしてその感じの曲を出しても、なかなかファンの理解を得るのは難しいだろうと思って出さなかったこともあります。でも、「アイドル」はタイミング的にそこがうまくハマったと思いますね。
徳力 屋代さんはどう感じて、どんなことに取り組まれたのですか。
屋代 ある程度認知されると、みんながその曲を使いたくなるので、そうなった場合に曲は長持ちしますよね。そういう文脈をつくれたことと、そもそも使いやすい楽曲にしていたことがひとつの要因だと思います。
私はこの曲に限らず、初動の跳ね方とそれ以降の売れ方は分けて考えるようにしています。「アイドル」は初動である程度跳ねていたので、「これはUGCを爆速で回転させることに振り切ったほうがいい」と感じました。そこで、UGCに対して「いいね」やコメントを返すなど、これまでの取り組んでいたUGC促進のアクションを100とした場合、「アイドル」では250くらいの量をやりました。
ソニー・ミュージックエンタテインメント
デジタルコンテンツ本部GSチーム プロデューサー
兼 RED エージェント部ルームY プロデューサー
屋代 陽平 氏
デジタルコンテンツ本部GSチーム プロデューサー
兼 RED エージェント部ルームY プロデューサー
屋代 陽平 氏
それまでも曲を使って、TikTokに動画を出してくれたら「いいね」して回ることはしていましたが、今回はリリース直後に上がっていた動画ほとんどにコメントを書いたり、動画をつくってくれた人をリストにしてまとめたりしました。そこまでやるかと思えるくらい動いきました。
徳力 そこまで力を入れて取り組んでいたんですね。
屋代 広がりを考えると、YOASOBIのミュージックビデオだけが1000万回再生されるよりも、100万回再生されるUGCが10個あるほうがパワーがあります。その10個のUGCの先にそれぞれのファンがいるので、単独の1000万回よりもリーチは広いですよね。