TOP PLAYER INTERVIEW #60

ネスレ日本「キットカット」の大胆な戦略、大幅リニューアルで目指す「史上最高」の成果【ネスレ 村岡慎太郎】

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 チョコレート菓子「キットカット」が2023年9月から日本発売50周年を記念し、赤いパッケージの「キットカット ミニ」を大幅に刷新し、「キットカット史上最高」と銘打ったキャンペーンを開始した。キットカットは、過去にも受験生を対象にした伝説的な「キットカット 受験生応援キャンペーン」などで成功を収めるなど、マーケティング領域で注目されるブランドになる。

 今回は、製品の刷新に伴って東京・渋谷や大阪・梅田で約50万人を対象にサンプリングを実施、さらに新しいテレビCMの放映などさまざまなプロモーションを行った。なぜネスレは、看板商品のひとつである「キットカット」を大幅リニューアルし、大規模なプロモーションを展開したのか。その背景や狙いについて、ネスレ日本 コンフェクショナリー事業本部 インツーホーム マーケティング部長の村岡慎太郎氏に詳しく聞いた。
 

日本のお客様に最も愛されるチョコレートブランドになる


――キットカットの日本発売50周年をきっかけに、赤いパッケージの「キットカット ミニ」をリニューアルし、「キットカット史上最高」というコピーで販売を開始しました。その狙いや背景を教えてください。

 キットカットの戦略のひとつは、我々がコアと呼んでいる赤色の「キットカット ミニ」に加えて、黒色の「キットカット ミニ オトナの甘さ」、抹茶味の「キットカット ミニ オトナの甘さ 濃い抹茶」、全粒粉入りの「キットカット ミニ 全粒粉ビスケットin」の4種類を定番商品として伸ばしていくことです。それによって、他の期間限定製品なども相関的に伸びていくと考えています。

 近年はインバウンド需要に向けて、いろいろなフレーバーやお土産用製品に注力していましたが、コロナ禍を機に改めて「日本のお客様に最も愛されるチョコレートブランドになる」というビジョンを掲げました。そのときに中心に置くべきなのは、やはり赤色の「キットカット」オリジナルです。50周年を機に、お客さまに改めて好きになってもらうことで、この先の50年も繰り返し買っていただけるようにしたいと考えました。
 
ネスレ日本
コンフェクショナリー事業本部 インツーホーム マーケティング部長
村岡 慎太郎 氏

2003年ネスレ日本入社後、コーヒー豆の買い付けに従事。その後、資材・物品サービスのバイヤーを経て、デジタルの重要性を感じ、2012年よりデジタル開発ユニットにて、新規デジタルメディア開発に従事。2015年1月より媒体統轄室に異動。 「ネスカフェ アンバサダー」、「キットカット」、ネスレ通販などの“オンライン・オフライン”のメディアプランを担当し、2020年1月スイス本社に赴任。2021年4月に帰国し、コンフェクショナリー事業本部 マーケティング部長としてキットカットの全体を統括し、2022年4月より現職。

 今回のリニューアルには、3年の月日がかかりました。キットカットの開発チームは、開発段階から常に競合他社の製品との比較調査を行っています。日本市場はチョコレートのクオリティがそもそも高いため、偏差値70くらいの商品群の中で突出することは非常に難しいです。そうした中で、リニューアルした製品は、なんと発売50年で初めて競合他社のクオリティを大きく上回る結果を出しました。

 50周年のタイミングで初めてそうした商品ができたため、「キットカット史上最高」というコピーを考えて、プロモーションをスタートしました。
  

――今回の新しいキットカットは、何が突出して良かったのでしょうか。

 リッチなカカオ感と、ウエハースのサクッサク食感です。商品開発においては、チョコレートに含まれるカカオ分を増やし、ウエハースもさらなるサクッサク食感を目指してレシピをいちから見直しました。この2つの要素が合わさって日本人の嗜好を満たし、今回の結果を出すことができました。

――そのレシピを目指すことになるまでに、どのような議論や経緯がありましたか。

 まず、消費者調査を行って、日本人の嗜好に合うのは「リッチなカカオ感」と「サクッサクのウエハース」だということを見出しました。そして、スイスや英国など、海外の製品開発チームを巻き込んでサンプル品を100以上つくり、その中で最も日本人の嗜好に合うものを調査して決めました。ここまで海外のチームをしっかりと巻き込んで取り組んだのは、ネスレ日本としては、初めての取り組みかもしれません。
  

 キットカットの赤は、国内のチョコレートブランドで売上No.1(※)なので、そこからさらに引き上げるのは非常に難しいことでしたが、チームで覚悟を持って本気で取り組みました。チームが一丸になれたということが、本当に肝だったと思います。

――「史上最高」というコピーは、どのような経緯で決まったのでしょうか。

 お客様に「キットカットが50周年でやってくれたな」というサプライズをもたらすために、コピーは大事な要素だと考えていました。その中で、我々はレシピの変更で事実として「過去最高の製品ができた」という自負があったので、それをお客さまに知っていただき、体験していただくためには、ストレートで分かりやすいほうがいいだろうと思いました。そして、「史上最高」という文言に行き着いたのです。誰だって「史上最高」と言われたら、食べてみようかなと思いますよね。

(※)インテージSRI/チョコレートカテゴリー/2022年1-12月/ブランド販売金額シェア1位

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