TOP PLAYER INTERVIEW #61

外資系広告会社、Googleを経てDeNAライブ配信「Pococha」 CMOに就任。キャリア選択で考えた条件

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 ライブコミュニケーションアプリ 「Pococha」は2023 年9 月末にダウンロード数534 万を突破するなど、近年ライブ配信業界が大きな注目を集める中で著しいサービス拡大を見せている。その「Pococha」でCMOを務めるのは、DeNAの ライブストリーミング事業本部 Pococha事業部 Head of Global Marketing, Pocochaの村口賢一郎氏になる。村口氏は外資系広告会社やGoogleなどで戦略プランニング・マーケティングを経験し、現在は「Pococha」のマーケティングを統括している。Pocochaが成長している要因や、今後のマーケティング戦略、マーケターとしてキャリアなどについて詳しく聞いた。
 

コミュニティ型のライブ配信を目指すPococha


――Pocochaは2023 年9 月末にダウンロード数534 万を突破するなど、順調に成長しています。ライブ配信業界の中でも特に大きくサービスを伸ばしていますが、その要因は何だとお考えですか。

 まず、2020年のコロナ禍が大きな転機になりました。人と人とのコミュニケーションに制限が生まれたことから、多くの人と同時視聴できるライブ配信に注目が集まりました。音楽 ライブやお笑い・舞台などのオンライン配信も盛んになり、“ライブ配信”というサービス体験自体に馴染みが生まれました。Pocochaは、その時期にデジタルマーケティングに 力を入れ、多くの方に興味を持ってもらい、ダウンロード数を大きく伸ばしていきました。
 
DeNA ライブストリーミング事業本部 Pococha事業部 マーケティング部 Head of Global Marketing, Pococha
村口 賢一郎 氏

外資系コンサルティング会社でのコンサルティング経験、外資系広告代理店での戦略プランニング経験を活かし、Google で Product Marketing Lead として Hardware 事業(Google Home, Google Pixel 等)の日本立ち上げに従事 。Google Pixel の日本市場への浸透に販売促進、パートナーシップを通して貢献 。また IBM から分社化した IT インフラ企業である Kyndryl Japan の事業立ち上げの CMO として企業ブランディング、新マーケティングモデルの確立を実現 。2023 年7 月より Pococha の Head of Global Marketing を担当。広告代理店と事業会社、B2C とB2B、コミュニケーションの上流から下流までの経験した強みを活かし、新規ブランドの立ち上げ・グロースマーケティングが強み。

 さらに、ライブ配信業界内でもPocochaが特に成長している理由は、そのサービス特性にあると考えています。ライブ配信は、大きくピラミッド型とサークル型の2種類に分けることができます。
  

 ピラミッド型(右図)は、インフルエンサーと呼ばれるような人が何百、何千という規模の視聴者に向けて配信する形態を指します。コメントの流れが速いため、配信者とコミュニケーションをとりたい場合はお金をかけてコメントを上位表示させることで答えてもらう確率を高めるのが一般的です。

 一方、視聴者数が数十人規模のサークル型(左図)は、ピラミッド型よりも小さなコミュニティです。視聴者が何かコメントをすれば、そこから配信者との会話が生まれます。また、ときには視聴者同士の会話が生まれたりするなど、横のつながりも生まれます。Pocochaが目指しているのは、この後者であるサークル型のライブ配信です。

 サークル型の良いところは、何百人という視聴者を集められるような特技がない人でも見てもらえたり、楽しんだりできる点です。さらに、Pocochaには配信時間に応じた報酬制度 があり、それが他のライブ配信と比較して価値になっています。

――ライブ配信といえば、多くの視聴者を集めるピラミッド型を思い浮かべます。Pocochaはなぜサークル型を目指したのでしょうか。

 YouTubeの台頭によって、好きなことをしてお金を稼ぐというクリエイターエコノミーが広がりましたが、実際に生活できるほどの稼ぎを得られるのはごく一部のトップクリエイターのみです。しかし、ミドルクラスやアマチュアのクリエイターにもまだまだ可能性があり、ビジネスの場でも活躍できる可能性があるはずだと考えています。そこで、そうしたクリエイターの価値をよりロングテールで引き出すという思想をもとに設計されたのがPocochaです。我々も、その考えをもとにマーケティングを行っています。
  

――長期的な視点で事業を運営するために、村口さんはどのような取り組みをしていこうと考えていますか。

 生活者は、企業のビジョンや考え方に共鳴してモノを選んでいます。同じように、Pocochaも単にライブ配信ができるプラットフォームではなく、どのような思想を持った場所なのかを伝えていく必要があると考えています。私はそれをプロダクトアウトやマーケットインになぞらえて「ビジョンアウト」と呼んでいます。

 プロダクトアウトやマーケットインに加えて、企業の真実や本来持っている価値を世の中に伝えていくビジョンアウトの3つをつないで、マーケティングプランをしっかり練っていく必要があると思っています。

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