日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #48

オダギリジョー父親役、相鉄・東急記念ムービーに学ぶ「アイデアとエグゼキューション」の重要性

 

バーバリー動画、撮影技術の素晴らしさが話題に


 海外の事例でも、企画はもちろん、その撮影技術などの素晴らしさに注目が集まるものは、幾つか存在します。今回は2020-2021年のカンヌ・ライオンズでフィルム部門とフィルムクラフト部門の両部門でゴールドを受賞したバーバリーの「FESTIVE SEASON(祝祭の季節)」をご紹介しましょう。

 さて事例紹介に入る前に、あらゆる広告表現(実はあらゆるコンテンツ)は、「IDEA(企画)×EXECUTION(表現)」でできている、という話をさせてください。

 IDEAは企画という日本語に当たるもので、どういう人物が登場して、どういうストーリーにし、どういう言葉を入れるか、といった事柄です。対してEXECUTIONはそれを表現としてどう実現するか、です。

 そしてEXECUTIONを可能にする様々な技術(撮影や編集やCG技術など)をCRAFTと呼び、カンヌ・ライオンズにはフィルム部門とは別に、撮影や編集やCG技術などに注目するフィルム・クラフト部門という部門が設けられています。このバーバリーの動画も(実は相鉄の動画も)、フィルム・クラフト部門でゴールドを受賞し、高く評価されています。

 バーバリーの2分ほどの動画のストーリーは、こうです。街の小さなテイクアウト・フードの店で店主とやり取りをする女性。バーバリーのコートを身につけています。「気をつけて。降って来そうだよ。落ちて来るよ」と言う店主に、「大丈夫、大丈夫よ」と言って外に出る女性。ここから手拍子をメインとする音楽が始まります。

 もうひとりの女性と、バーバリー・チェックをあしらったコートを着る男性2人と、グループはぜんぶで4人。曲は往年の名曲「雨に唄えば」で、やがて歌も始まりますが、外ではなぜか雨ではなく、氷の塊が落ちてきています。

 氷の塊をバッグで避けながら店に駆け込むビジネスマンを尻目に、4人は華麗にステップを踏んで踊りながら、氷の塊を物ともせず楽しそうに進んでいきます。4人揃って踊りつつ、さらに進んで行くと、一瞬ストップモーションとなり、氷の塊も中空に止まります。

 そのうちの1つを女性が拳で打ち砕くと、世界は再び動き出し道は海へと続きます。男性のひとりが上半身裸になって海へ。相変わらず降り注ぐ氷の塊の中、ゆったりと気持ちよさそうに海で仰向けになる男性。そこにBERBERRYの文字が表示されて動画は終わるのです。なんだか不思議で、相当にイマっぽく、妙にカッコイイ動画です。
 

 この氷の塊が降って来る世界で、4人が揃って踊りつつ進み、一瞬のストップモーションで氷の塊が中空に止まる場面や、そのうちの1つを女性が拳で打ち砕くと、世界が再び動き出すシーンの撮影や編集の技術の素晴らしさには、目を見張るものがあります。この動画は、クラフトの領域で有名なフランスの映像演出集団「メガフォース」が手掛けています。

 実は、広告表現だけではなく、ビジネスにおけるあらゆる活動が「IDEA×EXECUTION」でできている、と考えることができます。つまり、「アイデアや企画」と、「それをどのように実施するか現実化するか」です。ご自身の日々の活動についても、こんな点を意識してみたら、より効果的な活動になるのではないでしょうか。
他の連載記事:
日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く の記事一覧
  • 前のページ
  • 1
  • 2

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録