TOP PLAYER INTERVIEW #65

バーバリー契約終了からの黒字回復、三陽商会が成長フェーズで目指す「SANYO」ブランド構築

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auが追求し続ける「おもしろさ」、顧客の体験価値を高める新時代のコミュニケーション戦略
 2015年6月に英高級ブランド「バーバリー」との40年以上にわたるライセンス契約を終了した三陽商会。一説には売上高の半分を占めていたとも言われるブランドの撤退後、営業赤字が続いていたが、2023年2月期には営業黒字を達成。同年ECサイトをリニューアルオープンし、初となるブランド複合店を開設するなど、復活・成長基調の中で矢継ぎ早に改革を行う同社の狙いはどこにあるのか。さらに、近年の「長すぎる猛暑」や衣料品の廃棄に対する社会の厳しい目に、老舗アパレルメーカーとしてどう向き合っているのか。マーケティング&デジタル戦略本部 副本部長 口分田直丈氏に聞いた。
 

ブランド・店舗・ECの垣根越えCRM推進へ


―― 口分田さんのご経歴を教えてください。

 2022年3月に設立されたマーケティング&デジタル戦略本部は、EC事業を担うWEBビジネス部、ブランドの宣伝や販促をするマーケティング・コミュニケーション部、そして物流部の3部門からなっています(※2024年3月1日付けで4部門)。物流がこれらの部門と一緒になっているのは少し異色かもしれませんが、ECを強化していくにあたって、物流も一体で管轄した方がいいという判断でした。

 私自身は入社して約30年になりますが、2009年ごろからブランドのマーケティング、宣伝販促に携わっていました。2015年から「ブルーレーベル・クレストブリッジ」や「ブラックレーベル・クレストブリッジ」、「マッキントッシュ ロンドン」といった大型ブランドのローンチや、それぞれのブランドのEC立ち上げ、百貨店への大規模な店舗展開を担当しました。

 2015年はさらに、SANYO MEMBERSHIPという会員プログラムの立ち上げを担当しました。全社を挙げてデジタルマーケティングを推進していくためにスタートさせたもので、現在約150万人の会員様がいらっしゃいます。

―― 2015年といえば、「バーバリー」とのライセンス契約が終了した年でもあります。企業全体にとって転換点でもあったのでしょうか。

 ライセンス契約が終了したブランドについては、お話しできないのですが…。今思うと、2015年はさまざまなターニングポイントだったのは確かです。大変でしたが非常にいい経験をさせてもらいました。
 
三陽商会 マーケティング&デジタル戦略本部 副本部長
口分田 直丈氏

 1993年に三陽商会に入社。紳士服ブランドの営業・MDを経験。2009年よりマーケティング・宣伝販促部門に移り、既存ブランドの強化や新規ブランドの立ち上げに携わることでブランディングの推進を行う。2015年に開始した会員制度「SANYO MEMBERSHIP」をベースにCRM・OMO推進に注力している。

―― SANYO MEMBERSHIP開始以前に、三陽商会としての会員制度はなかったのでしょうか。

 ブランドごとにあっても、全社的なものはありませんでした。それまでお客さまの情報は、店舗ごとに紙の名簿で管理していました。「よろしければこちらにご記入いただけますか」というかたちで、住所、氏名、年齢などの情報を記入していただき、そこにお客様のサイズ、ご購入いただいた商品といった情報をあわせて記録していたわけです。ECのお客さまにはメールでやり取りをさせていただけましたが、リアル店舗でのお客さまには店舗からDM(ダイレクトメール)を送るか、直接お電話するという方式でした。

 今から見ると、とてもアナログな方法ですが、三陽商会の場合、大半のお客さまは百貨店に入っている各ブランド店舗でお買い物をされていて、その情報は「百貨店のお客さま」の個人情報であり、非常に厳重に取り扱われなくてはいけないという特有の事情もありました。しかし、それもCRMの観点から限界に達し、新たに三陽商会として会員プログラムを立ち上げ、そこにお客さまの情報を蓄積していこうとなりました。

 立ち上げ当初、5年で100万人という目標を掲げていました。2020年、目標通り約100万人にご登録いただき、そこからさらに150万人まで加速させたので、今のところは順調かなと思っていますが、他社と比較するとまだまだといったところでしょうか。

 顧客構成を見ると、実店舗のみで買ってくださるお客さまが7割を占め、ECのみは15%ほどです。両方を使ってくださるお客さまもいますが、やはり実店舗が圧倒的です。

―― 先般、マーケティング&デジタル戦略本部の下にCX推進部やCRM推進課を新設すると公表されました。その狙いをお聞かせください。

 2022年4月発表の中期経営計画で「CRM(顧客関係管理)の強化」を掲げてはいるものの、組織体として、どこがどうやるといったことが不明快だったり、詳細な落とし込みまではできてなかったり、というところが正直ありました。

 このタイミングでCRMに本格的に取り組んでいかないと、さまざまな面で遅れが生じてくる可能性がありました。ただ、現状の体制ではWebビジネス部がEC事業に責任を持っており、ECのCX(顧客体験)向上も部分最適で進めていたのです。

 一方、マーケティング・コミュニケーション部は、全社的なブランド観点で会員制度を管理していましたが、ECとは別部署なので、具体的には実店舗のお客様を対象とすることになります。そうなると全社的なCRMは進めにくい。ECも実店舗も関係なく、すべての顧客を起点としてCX向上のために動く組織をつくることにしたのです。

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