アクセンチュア・ライフ・トレンドにみるマーケティングの指針

アクセンチュアが5つの生活者トレンドを発表、マーケティング目線で見えてきた「本物さ」の希求【解説:オイシックス・ラ・大地 奥谷孝司氏】

 

顧客の求める「オーセンティシティ」

 
スーツを着た男性

自動的に生成された説明
オイシックス・ラ・大地COCO /顧客時間 共同CEO・取締役
奥谷 孝司 氏

1997年良品計画入社。店舗勤務や取引先商社への出向後、企画デザイン室などを経て、衣料雑貨のカテゴリーマネージャーとして「足なり直角靴下」を開発。2010年WEB事業部長に就き、「MUJI passport」をプロデュース。2015年10月にオイシックス(現 オイシックス・ラ・大地)に入社し、現職。2018年9月、株式会社顧客時間 共同CEO/取締役に就任。著書に『世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略』(共著、日経BP社)がある。

 アクセンチュアのレポートを読んで、なぜ海外のマーケターが最近「オーセンティシティ(authenticity:本物)」というキーワードを重要視しているのかが、あらためて理解できた。パンデミックがもたらした「暮らしのデジタルシフト」。企業はオンラインとオフラインを行き来する消費者との、強固なつながりをつくる手法に苦心している。一方、デジタルに過度に依存することで発生するフィルターバブル現象の加速化に加えて、生成AIの利活用がもたらすフェイク情報を、消費者は恐れるようになってきている。

 消費者は今、企業が伝える情報・商品サービスから「オーセンティック」「本物」とは何かを見極めようとしているように思う。そして、その「本物だという実感」を、テクノロジーを活用した買物体験を前提として求めている。だからこそ海外のマーケターは顧客が感じ取る「本物さ」を重視し、マーケティング活動はもちろん、企業経営そのものをパーパス・ドリブンにシフトしていくことに邁進しているのである。

 アクセンチュアが提唱する「cLTV」の実現には、企業が消費者に提供する体験価値のオーセンティックさが不可欠だと言える。さらには、テクノロジーを活用してパーソナライズ化を構築し、その提供した価値を消費者に「自分事化」してもらうことも必要だ。

 これからの企業に求められる「本物さ」を、いかにテクノロジーの弊害と恩恵のバランスをとりながら進めるのか?

 デジタル時代の「本物な体験」を求める消費者とつながるために、そして、cLTVの向上に向けて、多くのマーケターに本レポートを一読いただきたい。そしてオーセンティックという言葉の語源にある「正統の、正格の、本物の、確実な、真正」の意味を、企業活動を通してどう実現するのかを考えてもらいたい。


※後編「アクセンチュアのトレンド調査が提唱「cLTV」には、飾りではない具体的で現実的な方法論が求められる【解説:Repro 中澤伸也氏】」に続く
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