日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #49
アカデミー賞獲得・山崎監督が描く巨大怪獣「フードロスラ」社会問題を楽しく描く、味の素の注目キャンペーン
海洋ゴミ問題解決に、トーナメントを開催し漁師に賞金を支払う
さて、海外の事例でも昨今、深刻な課題に対して、ある種ユーモラスに挑む事例があります。ヘビーな話題を軽めのタッチで身近に、というわけでしょう。今回は、2022年のカンヌ・ライオンズでブランド・エクスピリエンス&アクティベーション部門ゴールド他を受賞した、コロナビールによる「PLASTIC FISHING TOURNAMENT」をご紹介しましょう。
海洋プラスティックごみをなんとか減らすために、誰かの「環境を大切にする心」に深刻に訴えるのではなく、プラごみが多過ぎて漁に支障をきたしている漁師に対して、なんと「プラごみを回収した獲得量を競うトーナメント」を開催したというもの。コロナビールは獲得量に応じて漁師に賞金を出し、いわばプラごみの被害者である漁師を支援しながら、20トン以上ものプラごみを減らしたと言います。この施策は、メキシコ、コロンビア、ブラジル、南アフリカ、イスラエル、中国など世界各地で行われました。
そんなヘビーな課題に、トーナメント形式を用いるのってどうなの?と、言い出しそうなお堅い人もいそうですが、きちんと成果も挙げ、カンヌ・ライオンズの審査員も高く評価したことになります。
ちなみにコロナビールは何年もの間、「リゾートが似合うビール」や「ビーチが似合うビール」というメッセージを続けています。そうした、ビーチを想わせ、ビーチが似合うビールだからこそ、美しいビーチを守りたい、ひいては美しい海を守りたい、と活動しているわけですね。だからこそ、海洋プラごみ回収を促す「プラスティック・フィッシング・トーナメント」を主催する、ということも、それなりに納得がいきます。
皆さんが、ビジネスや社会活動で立ち向かうべき課題は、それ自身とても深刻なものだと思います。しかし、立ち向かうべき課題が深刻だからと言って、コミュニケーションまで深刻にならなければいけない理由は、どこにもありません。むしろ楽しさを盛り込むことで、より効果的な活動になる可能性は高いのではないでしょうか。
- 他の連載記事:
- 日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く の記事一覧
- 1
- 2