TOP PLAYER INTERVIEW #66

資生堂がマーケティング組織を改編、生活者とブランドが共創する時代の「最適なチームの在り方」

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 コロナ禍で売上に大きな影響を受け、従来型のマーケティングを変革する必要性を感じた資生堂は2024年1月、ブランド・メディア・PRの3つの部門がワンチームとなり、共同で価値創造・提供しやすい新たな組織体制に変更した。その組織改編の背景には、多くの企業にとって参考になるマーケティングやブランディングの考え方がある。そこで今回は、資生堂ジャパン マーケティングリレーション本部 本部長 北原規稚子氏に詳しく聞いた。
 

生活者とブランドが共創する時代


――組織体制の改編ついて聞く前に、まずは北原さんのご経歴と管掌範囲を教えてください。

 前職はライオンでビューティー分野のマーケティングとブランドマネージャーを務めていました。資生堂に入社してからは、ヘアケアブランド「TSUBAKI」やメーキャップブランド「ELIXIR」「MAQuillAGE」などのブランドマネジメントに携わった後、メーキャップ部門のVP(部門長)・副CMOを務めました。数十あるブランド全体のポートフォリオ戦略を立案する部門や、マーケティング・インテリジェンスを社内に提供するCMI(Consumer & Market Intelligence)、商品開発をリードする部門、さらにはコンシューマーセンターなどを管掌してきました。

 現在はマーケティングリレーション本部長という立場で、チャネル事業本部に横断するブランドのマーケティングチーム全体に関わっています。マーケティングリレーション本部は、ブランドポートフォリオ戦略に基づいた各ブランドのエクイティの先鋭化、最小のブランドで最大の生活者・市場カバレッジができることを目指し、それを実現するPDCAをリードする部門です。ブランドのマーケティングプランなどを日々一緒に議論し、改善を繰り返しています。
 
資生堂ジャパン マーケティングリレーション本部長
北原 規稚子 氏

 ライオンにて営業、ビューティーケア分野のブランドマネージャーに従事した後、資生堂にてTSUBAKI、ELIXIR、MAQuillAGEなどのブランドマネジメント、メーキャップ部門のVP、副CMO、マーケティングリレーション本部長を歴任。

――今回、マーケティングリレーション本部長として、従来のマーケティング部に加えて、メディア戦略部(メディアプランニンググループとPRグループ)を含む幅広い領域を担当されました。具体的には、組織にどのような変化があったのでしょうか。

 2024年1月よりマーケティング部にメディア戦略部が統合されました。当社では、マーケティングのデジタルシフトに注力する中で、アクセンチュアと資生堂インタラクティブビューティーという合弁会社を立ち上げました。もともとは、メディア戦略部もこの資生堂インタラクティブビューティーに属していましたが、これからより重要になるデジタルはもちろん、トラディショナルメディアと言われるテレビや雑誌、ノンペイドのPRも含めて、生活者のジャーニー起点で、最適なメディアミックスを考えるという視点が重要であるという考えで、マーケティングリレーション本部所属となりました。ブランドマーケティングチームが、お客さまのパーセプションを動かす最適なメディアをコンサルティングできるチームになるべきだと考えています。

 さらに言えば、「メディア=デジタル」とは限りません。まだデジタルに不慣れなシニア層には、新聞の折り込みチラシが響くこともあります。重要なのは、そういったさまざまな形態のメディアをミックスさせて、ターゲット別に最適な体験を提供することです。こうした取り組みを行うために、ブランドマーケティングとメディアプランニングが一緒に取り組みやすい体制に変えました。

 この新しいプロセスにはPRグループも並走します。ただ、ここでいうPRは「商品をメディアに取り上げてもらう」という従来のPRだけではありません。というのも、昨今の化粧品市場では、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を接点としてお客さまに選ばれる場合が非常に増えているのです。

 つまり、美容家やインフルエンサーなどが取り上げて紹介することで、さらに一般生活者のUGCに派生し、商品に注目が集まるということです。これを偶然のバズではなく意図して実現しようとすると、商品開発の上流の段階から「お客さま向けのインサイト」「美容家やインフルエンサー向けのインサイト」を設定して、カスタマージャーニーを描かなければなりません。

 特に、美容家に動いてもらうためには、「たるみにアプローチするこういった独自の技術があります」など、具体的で信頼できる情報を準備しておく必要があります。そのための証明データを取得したり、研究したりといった工程は何カ月もかかるため、実はこの「情報をつくる」という過程は、プロダクトをつくるのと同じくらいに大変なことなんです。そこで、PR部が美容家のインサイトを理解しているプロフェッショナルとして、商品のコンセプト段階から一緒に価値を創造することが重要になります。

 現在は、メーカーがつくったメッセージをテレビCMで発信しただけでは、ブランドに憧れて買ってもらえるような時代ではありません。つまりポイントになるのは、ブランド価値を高めてくれる生活者の発話をどのように生みだしていくのかということです。お客さまの購買意識に作用することに変わりはありませんが、接点の順番が大きく変わってきています。私たちは、生活者とブランドが共創する、これからの時代に最適なチームを目指しています。

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