日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #50
SNSでも話題の花王メリット「家族愛」広告。心に刺さる普遍的価値を上手に描く
カンヌで喝采を浴びたIKEAのテレビCM
商品やサービスの機能や特徴をメッセージするのではなく、普遍的価値をみごとに描いて上手く行った海外の事例として、筆者の脳裏にいちばん最初に思い浮かぶのは、IKEAの「プラウドリー・セカンドベスト」というテレビCMです。
このテレビCMは3本のシリーズで出来ています。そのうちの1本は、IKEAの乳幼児用の椅子が映し出されるシーンから始まりますが、そこには誰も座っていません。カメラはパンして行き、父親の腿(もも)の上に座って、乳幼児食を食べさせてもらっている幼い子どもを映し出します。
ここまで音楽などは一切なく、素朴な状況音の他はほぼ無音です。そして、そこに「Proudly Second Best」の文字が…。つまり「(父親の腿に次ぐ)2番目にサイコーな椅子です!」というわけですね。なるほどぉ。確かに、どんな素晴らしい椅子も、父親の腿の上にはかないませんものね(他に商品を変えて2バージョンがあります)。
IKEAも知らない人はいないほど有名な家具ブランドです。そうした状況で、何か機能的な特徴などを訴えるより、「家具を使う人の普遍的な価値」に寄り添うブランドであることを上手にメッセージすることが、ブランドと顧客のより強い絆に繋がり、結果的には、売上アップにも結び付き得る、という判断なのだと思います。
筆者は、このテレビCMのフィルム部門ゴールド受賞が紹介されたカンヌでの贈賞式に列席していたのですが、会場からひときわ大きい惜しみない拍手が送られていたのを、よく覚えています。普遍的価値は、上手に描いて、しっかりと商品に結び付けることが出来れば、強力な方法論になり得ると実感しました。
広告コミュニケーションやマーケティングを考える時には、自分が扱う商品・サービスの機能や特徴から考え始めるのが一般的だと思います。もちろん有効な方法だと思いますが、時に、その商品が関連する分野での「普遍的価値」に想いを馳せてみることも、あながち無駄ではないのかもしれませんね。
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