CATCH THE RISING STAR #03
「風呂でも商談視聴」昭和っぽさ薫るナチュラルボーンマーケター【ノバセル:今井雄太氏】
「心動かす瞬間」をKPI化
―― 仕事で課題に感じることはありますか。
現在のノバセルは大手企業のお客さまにも十分に価値提供できる体制になっているのですが、「スタートアップ向けのタクシーCMの会社」という以前のイメージが根強く、マッチしないのではないかと思われる傾向があります。ガラリとイメージを変える「驚き」のようなものをどこかでつくらないと、なかなか商談は進んでいきません。「驚き」をどう演出するかが課題ですが、その点ではオフラインの場に有効性を感じています。お客さまの興味関心をグッと引きつけられる瞬間を最大化するために、イベントなど価値が伝わりやすいところも含めて設計しようとしています。
私たちは電通さんや博報堂さんのような、長い歴史を持つ素晴らしい企業がつくってきた市場をメインに戦う新興プレーヤーです。その中でノバセルにしかできない価値や、業界の仕組みを変えていくプレーヤーとしての存在感をどう見せて伝えていくか。業界全体の情勢を理解した上で、戦い方を変えていくというのも日々模索しています。
あとは目標設定の仕方ですね。組織を動かすには一定の数値目標が必要ですが、たとえばお客さまに与えたい「驚き」や、心を動かす瞬間をどう表現するか。見えない動きを数値化するのは難しいです。その点では、インターン時代に参加させてもらったマーケティングカンファレンスの「マーケティングアジェンダ東京2023(※)」で、ソファ運営事業のYogiboさんがリアル店舗ではソファを体験してくれた人の「座数」を最も重視しているというお話を聞き、すごく勇気をもらいました。一般的なKPIでなくても、要は、顧客に一番価値を感じてもらう瞬間をKPI化して、それを追えばいいのだと。
そういった顧客の心を動かすポイントは、もちろんビジネスモデルや商品によって違いますが、だからこそ他の業種の事例は抽象化しやすく、アナロジーを持ってきやすいところがあります。お客さまの心をグッと伸ばせるポイントはどこにあるか。考え方はいろいろあって、たとえばノバセルの場合、商談の中で代表の田部が出ると商談が動きやすいという傾向があるとしても、その差分はなんだろう。田部の肩書き以外に、どういうポイントがお客さまの心を動かすのか。その点を明らかにして、思い切って目標設定することで、突破口が見えるかもしれません。
―― 今後の目標を教えてください。
業界の「型」を踏まえて外していく「守破離」は、ノバセルでは社訓のようになっており、私自身も大事にしたい考え方です。今はとにかく量をこなして「型」を身につける時だと思っています。
その上で、将来的には商品を0→1、その先へとグロースさせていく事業のPL責任も担えるような経営者になりたいと思っています。お客様が持つ素晴らしい商品やサービスを、当社のサポートによって成長させたいです。これは当社が掲げる「マーケティングの民主化」というビジョンと関わります。ビジョン実現のために、当社が提供できる価値を一人でも多くのお客さまに届けるために、現在のマーケティングの職責を全うしたいです。
父が自営業だったこともあって、起業などを考えたこともありましたが、自分の場合は今向き合っているコトに全力投球したいので、キャリアなどを逆算的に考えるのは好きではないです。ある意味、若さに甘えているのかもしれませんが、まだ24歳なので、その場その場で自分が一番コミットしたい事業を成長させることに熱中し続けられればと思います。ちょっと、「昭和」っぽいですか(笑)。
※参考記事:脱・店舗ビジネスの常識、Yogiboとコナズ珈琲に学ぶ「体験」を重視する逆転の発想【マーケティングアジェンダ東京レポート】
田部 正樹 氏
ラクスルCMO/ノバセル 代表取締役社長
ラクスルCMO/ノバセル 代表取締役社長
「マーケティング=商売」
- 顧客にフラットな姿勢で向き合う
- 企業価値、事業価値>マーケティング
- 経営者として1円に執着する
- 見えない未来を信じぬく事業への熱狂
- 想起を制するものがマーケティングを制す
というのが私のマーケティング論です。
この中で今井さんは既に(1)(2)を兼ね備えたナチュラルボーンマーケターだと思っています。施策に溺れがちな若手が多い中で事業成長を最上位と捉えて、顧客に向き合うことができる。今後はまさに事業成長を通じて早くにPL責任を持ち、1円に執着することができる経営者になっていって欲しいと思います、最速で。
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