CATCH THE RISING STAR #05

フェリシモで若年層向けメディアを立ち上げ、収益化模索する若手マーケター【松本美卯氏】

前回の記事:
クラフトビール市場に新たな価値創出 サントリーマーケティング&コマース2年目マーケターの挑戦【柿崎優希氏】
 企業におけるマーケティングの重要性が増す一方、「マーケターの仕事は生成AIに奪われるのではないか」とも囁かれる昨今。そんな時代の変革期に、マーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。

「Z世代」と一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカスしたAgenda noteの本連載。彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。

 第5回でインタビューしたのは、カタログ通販大手のフェリシモで若年層の顧客開拓に向けて新メディア立ち上げに奮闘する入社3年目の松本美卯氏。「伝えること」の難しさに直面しながら、同世代に響く新しい価値発信を追求する若手マーケターの思いに迫った。
 

「おおらかなメディア」創設


――大学では社会学を学んでいたということですが、なぜフェリシモに入社したのですが。

 子どものころから漠然と「社会」に対して興味がありました。日本では当たり前に電気が使えて、暑い夏でもエアコンのおかげで快適に過ごせますし、好きな食料も手に入りやすい。一方で、世界には貧困に喘ぎ、生きていくこと自体が困難な人々もいます。成長するにつれて、そうした社会の格差や不平等さが分かってくる一方で、自分の快適な生活や幸せな日常を簡単には手放せない。綺麗ごとだけではうまくいかない、理想と現実の違いに葛藤しました。そんな中で、フェリシモの「ともにしあわせになるしあわせ」というコア・バリューに共感して、入社を決めました。

 出身は千葉県なのですが、母も祖母もずっとフェリシモのカタログ通販を愛用していました。私自身もフェリシモで母が買ってくれた子供服を着たり、家に雑貨があったりしたので、親しみのある企業でもありました。
 
松本 美卯 氏
フェリシモ
クラスター本部 定期便MC統括グループ リアルメディア制作・編集G 兼
クラスター本部 次世代定期便開発室

―― 入社から現在までどのような仕事を担当されたのですか。

 現在2つの部署を兼務しており、どちらも主力事業である「フェリシモ定期便」に関する業務を担っています。「フェリシモ定期便」は、フェリシモが創業時から続ける、毎月1回ほどのペースで、申し込んだ商品が定期的に届くサービスで、いわゆるサブスクの先駆けとも言われています。コアなお客様は何年も継続してくださるのですが、そのぶん、常に新しい世代へのアプローチを同時に進めなければなりません。

 1年目から配属されているDMの部署では、定期便の利用を中止してしまったお客様へのDMコンテンツの作成を行っています。特に若年層の方々などSNSで話題になった商品を購入いただいた方にも、そのまま定期便を続けていただけるようサービスの本質的な価値をお伝えしたいと考えていました。「フェリシモ定期便」は本来、モノを届けるだけでなく、その商品を使用することで楽しくなったり、まわりの人と会話が弾んだりするなど、暮らしを幸せにするという「経験価値」を届けることを重視しており、そういった価値が伝わるように、若年層向けDMコンテンツの再編集にも取り組んでいます。

 もうひとつが「次世代定期便開発室」で、こちらは若年層に対してどう接点をつくり、どのように新規顧客層を開拓していくかを考える部署です。具体的には今年3月、若年層をメインターゲットとした「このごろ」という新しいライフスタイルWebメディアを正式にリリースしました。

―― 新メディアについて詳しくお聞かせください。

 社会人になると、未来に対する漠然とした不安やプレッシャーを感じる人も多いと思います。「このごろ」は、新社会人から社会人3年目くらいまでをコアな読者層と想定して、彼らの日常に「おおらかに寄り添う」メディアを標榜しています。

 実は、企画チーム名を「次世代、暮らしの探究所(R)」としていたことから、サイトの名称も同じようにする予定でした。ただ、「次世代」って、実際に読んでほしい私たちの世代が「自分たちのこと」だと思ってくれるか、という疑問が湧きました。一番大事なのは、若者が「これは自分たちのメディアだ」と感じてくれることです。

 SNSを日常的に活用する若年層は、つい同世代の活躍している人に目がいき、自分と比較してしまいがちです。SNS上で「こうあるべき」「こうすべき」といった価値観や規範が醸成され、それに囚われてしまうこともあります。

 新しいメディアは、私自身を含め、同世代の誰かが悩んでいることについて、規範やノウハウじゃなく、その人なりの答えを伝えていきたいと考えました。誰かはこう考えて、悩んで、「このごろ、みんなそんな感じなんだね」というふうに。チームでブレストを重ねる中で、「このごろ」という名称と、「今を生きる僕らのためのおおらかなメディア」というコンセプトが固まりました。肩肘を張らずに日常の悩みを共有したり、仕事や暮らしに役立つ情報を発信したりすることで、読むと心がスッと軽くなるようなコンテンツを企画しています。

 リリースと同時に、新社会人の日常を描いたショートムービー「社会人になった、わたしに―このごろのある日常」を公開しました。
 

友達に『お金貸して』と言われたらどうするか」といった、仕事やお金、恋愛など身近な悩みに向き合う記事コンテンツのほか、社会人の先輩方に悩みや歩みを聞いて、若い世代が一歩先の未来を想像できるようなインタビューも公開しています。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録