師弟対談 #02

堅実にキャリアを歩んでいるマーケターの共通点【師弟対談:音部大輔氏とスープストックトーキョー工藤萌氏】

前回の記事:
音部大輔氏とスープストックトーキョー工藤萌氏の師弟対談、ブランドの存在意義を伝えた資生堂時代の秘話
 2024年4月1日、資生堂やユーグレナでマーケティングや経営に携わってきた経歴を持つ工藤萌氏が、スープストックトーキョーの取締役社長に就任した。工藤氏は新卒で入社した資生堂で、当時CMOを担っていた音部大輔氏(クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役)のもと、当時史上最年少でブランドマネージャーを務めた。その経験を通じて、経営やマーケティングの基礎となる考え方を学んだ。

 今回、工藤氏の社長就任に合わせて、音部氏との「師弟対談」が実現。工藤氏が音部氏から学んだことや当時の印象的なエピソード、音部氏から見たキャリアをしっかりと歩んでいるマーケターの特徴などを語り合った(全3回)。前編では工藤氏が音部氏から受け取った学びとブランドの存在意義について語り、本稿の中編では工藤氏が成長するためにしてきた行動や考え方、キャリアをしっかり歩んでいる人の共通点などについて詳しく語り合った。
 

100メートル走なのに、120メートルを走っている


――これまで工藤さんは、ご自身が成長するためにどのような行動や考えを意識してきましたか。

工藤 実は、キャリアの成功について考えたことはなく、自分のポジションにあまりこだわりはないんです。その代わり、ブランドのパーパスをどのように達成するか、そのためには何が足りないのかを音部さんの書籍や研修カリキュラム、夜間のMBAスクールなどで必死に学びながら、インプットとアウトプットを高速回転してきました。
 
スープストックトーキョー 取締役社長
工藤 萌 氏

 大学卒業後、資生堂入社。営業を経験した後、一貫してマーケティングに従事。低中価格メーキャップブランド「マキアージュ」「マジョリカマジョルカ」を担当し、当時史上最年少のブランドマネージャー、サンケアブランド「アネッサ」のグローバルブランドマネージャーなどを務める。第一子出産を機に2019年バイオテクノロジー企業の株式会社ユーグレナへ転籍し、マーケティング部門の立ち上げやマスターブランド戦略等を実行。事業本部長、執行役員を歴任。2023年3月よりスープストックトーキョー顧問、2023年8月同社へ入社し、取締役に就任。2024年4月1日付で同社取締役社長に就任。

資生堂にいたとき「自分はマーケティングを勉強してきたわけでもないし、できない人間だ」というコンプレックスが人一倍強くて、行動の量とスピードで頑張らないと一人前のブランドマネージャーにはなれないという焦りがありました。いまもその癖が抜けていないのだと思います。でも行動しているときはアドレナリンが出て、すごく楽しいんですよね。

音部 工藤さんは自身で設定している「満足するレベル」が高いんですよ。100メートル走なのに、120メートルを走ろうとしている。課せられた期待を超えようとしていることはもちろん、自分で高いゴールを設定しているんだと思います。

工藤 確かにそうかもしれません。特に、マーケターはお客さまに向けて取り組んでいる仕事だからこそ、社内や他のブランドマネージャーがどうかというよりも、目指しているお客さま像の変化などが達成できたときに、初めて満足感を得られるんですよね。

音部 つねに消費者のことを考えて、消費者やブランドの観点で物事を見ているからですね。

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