師弟対談 #02

堅実にキャリアを歩んでいるマーケターの共通点【師弟対談:音部大輔氏とスープストックトーキョー工藤萌氏】

 

3つの要素を持つ人は、自然とキャリアがついてくる


――工藤さんに限らず、キャリアをしっかり歩んでいる人の共通点は何だと思われますか。

音部 さきほど話したように、明確な実績をもっていることは重要な要素のひとつです。それに加えて、まともで、ちゃんとしていて、気が利く人であることも共通点だと思います。それらの要素をもっていて、キャリアをうまく歩めていない人にはあまり出会ったことがありません。
 
クー・マーケティング・カンパニー / 代表
音部 大輔 氏

 P&Gジャパン、マーケティング本部に17年間在籍し、ブランドマネジャー、マーケティングディレクターとしてアリエール、ファブリーズ、アテント、パンパースなどのブランドを担当し、市場創造やシェアの回復を実現。のちにUS本社チームでイノベーションの知識開発をマーケティングとして主導。帰国後、ダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、日産自動車、資生堂など多様な文化背景、製品分野で、複数ブランド群を成長させるブランドマネジメント、組織構築、人材育成を指揮。2018年より現職。博士(経営学 神戸大学)

工藤 そうですね、それらの要素は重要だと思います。音部さん、もう少し具体的に教えてくれますでしょうか。

音部 ひとつ目の「まとも」というのは、マーケティングやビジネスをロジカルに、理路整然と考えられることです。つまり、幸運に依存せず、マーケティングやビジネスを考えられるということですね。少なくとも結果を振り返るときには、起きたことをきちんとロジカルに考えられることが重要です。

2つ目の「ちゃんとしている」というのは、責任感がある、コミットメント力がある、期限を守れるといったことですね。これはチームで働くうえでは大事だと考えています。

3つ目の「気が利く」というのは、特にマーケターにとって大切なことです。消費者に「欲しい」と言われたものをそのまま出すのでは、ダメでもないけれど、それほど上等でもありません。たとえば、消費者は「何か飲み物が欲しい」という程度のことしか言いません。しかし、暑いところを歩いてきた人であれば、冷たい飲みものを出したほうがいいし、お腹が減っている人であれば、スープを出したほうがいいわけです。相手のことを理解し、自分が提供できるものがわかっていなければ、気の利いたことはできません。

この「まともで、ちゃんとしていて、気が利く」という3つが、キャリアをしっかり歩んでいる人の共通点です。これは言い方を変えれば、超常現象ではなく自然現象として、いろいろなことを理路整然と考えることができ、責任感をもって活動し、相手のことを理解して期待を超えられるということですね。この3つを併せもっていながら、あまりうまくいっていない人は、タイミングが悪いだけだと思います。そんな人は、来年にはきっとよいことが起こるので、安心して突き進んでほしいと思います。

さらに言えば、この3つに加えて、何か固有の視点をもっていると、素敵だなと思います。工藤さんであれば、「世の中がうまくいくといい」といったキャリアミッションなどですね。
  

また、チームや組織として仕事をするのであれば、幾ばくかのリーダーシップがあると、さらにいいなと思います。リーダーシップを直訳すると「統率力」ですが、自分が実現したいことのために他者を巻き込む力という意味で訳すなら、「図々しさ」というほうが近いかもしれません。

「日本の歴史におけるリーダーは誰か?」と聞くと、多くの人は坂本龍馬と答えるのですが、坂本龍馬は誰に頼まれたわけでもないのに「日本を今一度せんたく(洗濯)いたし申候」と言いました。彼は公共のためにそう言ったわけですが、公家や武家からすればいい迷惑ですよね。それなのにも関わらず、そう宣言して、そこそこやりきったことは「図々しさ」があったからだと思います。

そのため、まともでちゃんとしていて気が利いて、何か固有のユニークな部分をもっていて、それらを実現できる図々しさがあれば、その気がなくても工藤さんのようにキャリアがついてくるのではないかなと思います。

工藤 ありがとうございます。音部さんにそう言っていただけると嬉しいですね。

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