師弟対談 #02

堅実にキャリアを歩んでいるマーケターの共通点【師弟対談:音部大輔氏とスープストックトーキョー工藤萌氏】

 

情熱を傾けられる「世の中の体温をあげる」というキャリアミッション


――工藤さんのもつ固有のもの、つまり現在のキャリアビジョンはどのようなものですか。

工藤 私がスープストックトーキョーに入社したのは、「世の中の体温をあげる」という理念に、自分自身の想いと重なる部分があったからです。

私は前職のユーグレナで、気候変動や途上国の栄養課題、先進国の健康寿命延伸などに向き合ってきましたが、それが解決できたとしても、そのあとによい状態が維持できるかどうかは、一人ひとりの人間の在り方次第なのかと考えました。
  

では、人の気持ちがどうあれば、そのよい状態が維持できるのか。それは利他の心をもち合って生きていける温かい社会になれば、よい状態を維持できる社会になるのではないか。そして、私がこれまで取り組んできたマーケティングの経験を生かせば、そのような社会を実現できるのではないかと思ったんです。

私たちは「スープ屋だけど、スープ屋ではない」と言っています。スープを提供してお金をいただいているわけですが、身体だけでなく心も温める。それが日常に溶け込む店舗の中で行われることで、自分らしさを取り戻せる居場所を見つけられたり、自分が存在していていいんだと思える、一人ひとりの個性をお互いに大事にできる社会をつくっていけたらいいなと思っています。

実際に、お客さまからいただいた声で印象的だったのは、「仕事でいっぱいいっぱいだったときに高圧的な態度で注文してしまったけれど、スープストックトーキョーの店員さんに笑顔で『今日も素敵な1日をお過ごしください』と返されてハッとして、そんな態度を取ってしまった自分を申し訳なく思った。もっと1日を頑張ろうと、前向きに気持ちを転換できた瞬間だった」というエピソードです。小さな力かもしれませんが、そうしたドラマが毎日いろいろな店舗で起きているというのは、すごく大事なことだと思いました。

音部 すばらしいエピソードですね。先ほど、100メートル走なのに120メートルを走ると言いましたが、それは量を満たすために頑張って走っているのではないですね。それは飽くなき努力を苦痛に感じないほど情熱を傾けられるミッションをもっているからなのだなと、話を聞いていて思いました。
  

工藤 そうですね。何か意義を見つけないと自分自身が苦しくなってしまうんですよね。なので、まずはミッションを見つけるようにしています。

音部 それが見つかれば一生懸命に取り組めるんだよね。

工藤 はい、スープストックトーキョーという本当に素敵なブランドを見つけられました。

※後編 「世の中の体温をあげる」という理念を神棚に置かない【師弟対談:音部大輔氏とスープストックトーキョー工藤萌氏】 に続く
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