創造的思考の源泉とマーケティング #02
「友達がやってるカフェ」や「いい人すぎるよ展」の仕掛け人が語る、CMプランニング3.0時代の発想法
リクルートでクリエイティブ・ディレクターとして広告を制作し、武蔵野美術大学では社会人の創造的思考育成プログラムの講師も務める萩原幸也氏が、創造的思考を駆使してビジネスシーンで活躍するプロフェッショナルと対談し、アイデアの源泉やマーケティングにつながる考え方を解き明かしていく「創造的思考の源泉とマーケティング」連載。
第2回は「友達がやってるカフェ/バー」や「JANAI COFFEE/JANAI GAMES」などユニークなコンセプトの飲食店に加えて、「いい人すぎるよ展」や「やだなー展」などの展示会のプロデュースでも注目を集めるkakeru代表の明円卓氏が登場する。
「友達がやってるカフェ/バー」は、店員がどんな来客も「友達として」接客するカフェ/バーで、店名の通り友達のバイト先に遊びに行っているような感覚で楽しむことができる。展示会は、日常に溢れるちょっとした瞬間を表現し、共感を生む作品が多くあり、SNSを中心に話題を集めている。最近では、サントリーと共同開発したジントニックをコンビニエンスストアなどで販売しており、その商品名も「あの田中が一杯目に必ず飲むやつ」や「スペイン旅行でめっっっちゃ美味かった酒」などユニークな名前になる。このような独創的なアイデアはどのようにして生まれるのか。前編では、「友達がやってるカフェ/バー」などの企画を生む発想法や、明円氏の考え方について詳しく聞いた。
第2回は「友達がやってるカフェ/バー」や「JANAI COFFEE/JANAI GAMES」などユニークなコンセプトの飲食店に加えて、「いい人すぎるよ展」や「やだなー展」などの展示会のプロデュースでも注目を集めるkakeru代表の明円卓氏が登場する。
「友達がやってるカフェ/バー」は、店員がどんな来客も「友達として」接客するカフェ/バーで、店名の通り友達のバイト先に遊びに行っているような感覚で楽しむことができる。展示会は、日常に溢れるちょっとした瞬間を表現し、共感を生む作品が多くあり、SNSを中心に話題を集めている。最近では、サントリーと共同開発したジントニックをコンビニエンスストアなどで販売しており、その商品名も「あの田中が一杯目に必ず飲むやつ」や「スペイン旅行でめっっっちゃ美味かった酒」などユニークな名前になる。このような独創的なアイデアはどのようにして生まれるのか。前編では、「友達がやってるカフェ/バー」などの企画を生む発想法や、明円氏の考え方について詳しく聞いた。
「発信基地発想」で「届ける」から「届けてもらう」時代へ。
萩原 私と明円さんは、トリプルセブン・クリエイティブストラテジーズの福田敏也さん主宰の「777塾(福田氏がポストマス時代のクリエイター育成を目的にスタートした塾)」ではじめて出会って、10年以上の付き合いになります。当時は、まだ大学生でしたよね。
明円 そうですね。電通に内定はもらっていたものの、まだ入社前で大学4年生でした。翌年の2014年に電通に入社してCMプランナーを務め、その後2020年に退職し、kakeruを立ち上げたんです。現在のkakeruは、広告・飲食・企画展の3つの事業を行う会社になりました。
kakeru代表
明円 卓 氏
2014年より電通でCMプランナー/コピーライターとして活動。2020年に電通を退職後、 kakeruを創業。『JANAI COFFEE』『JANAI GAMES』『友達がやってるカフェ』などの飲食店のプロデュースや、『いい人すぎるよ展』『うれしいすぎるよ展』『やだなー展』などの企画展を主宰。
明円 卓 氏
2014年より電通でCMプランナー/コピーライターとして活動。2020年に電通を退職後、 kakeruを創業。『JANAI COFFEE』『JANAI GAMES』『友達がやってるカフェ』などの飲食店のプロデュースや、『いい人すぎるよ展』『うれしいすぎるよ展』『やだなー展』などの企画展を主宰。
萩原 その3つの事業を行うことは、事前に決めていたわけではないんですかね。
明円 そうですね。広告の仕事をやろうと思って独立したんですが、せっかくなら自分の好きなモノづくりをしたいと思って、飲食事業と企画展も始めたんです。いまはこの対談場所にもなっている「友達がやってるカフェ/バー」を含めて、飲食店を3店舗、運営しており、今後も拡大予定です。
東京・原宿にて2023年4月にオープンした「友達がやってるカフェ/バー」
萩原 「友達がやってるカフェ/バー」はサントリーさんとコラボして、オリジナルのアルコール缶飲料の商品開発もしていますよね。この取り組みは、どういう経緯だったのでしょうか。
明円 サントリーさんからオファーをいただいて実現しました。一緒に味を決めたりやパッケージデザインをするところから関わりました。
萩原 商品名が「あの田中が一杯目に必ず飲むやつ」や「飲むと人のことを褒め始めてしまう酒」などネーミングセンスがさすがですね。
明円 店員が友達として接客する体験を商品に落とすにはどうすればいいか考えて、このようなネーミングになりました。パッケージのQRコードには「こういうのだるいけど一回読み込んでみてね」という表現を使っています。あとは、あまり気づかれていないのですが、隠れた英文も一つひとつ内容が違うんです。
kakeruがサントリーと共同開発し、「友達がやってるバー<ジントニック>」「友達がやってるバー<サングリア>」を全国のファミリーマートとドン・キホーテにて先行発売している
萩原 何と書いてあるんですか?
明円 「山本がずっとサングリアのこと、シャンデリアって言ってたよね」みたいな、そういうくだらないことを書いています。
萩原 「いい人すぎるよ展」でもどこか“くだらならさ”がありました。あれはどこまで計算してやっているのだろうという疑問があったのですが。
リクルート マーケティング室 クリエイティブディレクター/部長
萩原 幸也 氏
山梨生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業後(株)リクルート入社。リクルートグループのコーポレート、サービスのブランディング、マーケティングを担当。武蔵野美術大学ソーシャルクリエイティブ研究所 客員研究員。武蔵野美術大学大学校友会 会長。JAA 公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 クリエイティブ委員。県庁公認山梨大使。
萩原 幸也 氏
山梨生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業後(株)リクルート入社。リクルートグループのコーポレート、サービスのブランディング、マーケティングを担当。武蔵野美術大学ソーシャルクリエイティブ研究所 客員研究員。武蔵野美術大学大学校友会 会長。JAA 公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 クリエイティブ委員。県庁公認山梨大使。
明円 最近、“発信基地発想”と言っているのですが、ふざけられるポイントはすべてふざけて、それを誰かが気づくとSNSで発信してくれて、遠くに広がっていくという考え方です。自分たちで発信するよりも、第三者が発信してくれることのほうがより威力があると思います。
萩原 “発信基地発想”という視点はユニークですね。なぜここまで明円さんのクリエイティブは話題になるんでしょうか。
明円 TikTokやInstagramのリールなど、ショートムービーと体験型のクリエイティブの流行にマッチできたことが大きいと思います。私は世の中の通信環境とともに流行るものが決まると思っています。5GやWi-Fi環境が整って、どこでも映像を見られる時代になったからこそ、体験型のクリエイティブをショートムービーで届けられるようになりました。