創造的思考の源泉とマーケティング #02

「友達がやってるカフェ」や「いい人すぎるよ展」の仕掛け人が語る、CMプランニング3.0時代の発想法

 

「誰かが撮って発信してくれる」ための設計


萩原 となると、CMプランナーとしてのモノづくりとは異なる、体験型のクリエイティブを意識して設計していますか。

明円 いえ、そこは分けていませんね。たとえば「友達がやってるカフェ/バー」の店員の立ち位置は、お客さんのフロアの高さよりも少し高く設計しています。その理由はお客さんがドアを開けて入店した瞬間から店員の様子を動画で撮りやすくするためです。これはCMプランニングの時と同じ発想です。「お客さんが店員を撮った映像がCMになっちゃうこと」を意識して組み立てています。
  

隠れ家的なバーをコンセプトにバンダイナムコアミューズメントさんとコラボして、2023年5月に大阪・梅田でオープンしたノンアルバー「JANAI GAMES」の入口も同様の設計にしています。秘密の廊下に入って、スマホを縦に構えてカメラを立ち上げると画面にぴったり廊下が収まります。そのままスマホを持って、正面のドアに向かってどんどん進んでいくだけでストーリーズ向けの映像が撮れるんです。歩く時間は7秒ほどで、ちょうど見ている人がわくわくできる時間になるように演出しています。

個人的には「CMプランニング3.0」に挑戦しているつもりです。CMプランナーの仕事も時代の変遷とともに変化しています。テレビで流れるCMを作るのが1.0、SNSをはじめとしたWEBの効率化を考えた設計までするのが2.0、そして3.0の時代は第三者の発信をどう設計するのかという所まで考える必要があるのではと思います。

萩原 非常に共感できる考え方ですね。そもそもテレビCMも、視聴者が勝手に話題にしてくれるポイントを設計するからこそ、情報が拡散していきますよね。それと同じ発想ですね。
  

明円
 はい、そうですね。

萩原 それから明円さんの思考は「サービスドミナントロジック」という、モノはすべてサービスに包含されているというビジネスの考え方にも通じます。

モノを売っているときはその対価としてお金をもらっていましたが、この考え方に基づけば「価値」というのは顧客と「共創」されるものであり「共創価値」が大事になるんです。

たとえば、ビールも「お酒」ではなく、「みんなと楽しむモノ」としての価値かもしれないし、車も「移動すること」ではなく、「大切な時間」が価値かもしれないという考え方です。明円さんの 話を聞いて、CMも共創価値という考え方に繋がっているんだなと感じました。
  

明円 それは面白い考え方ですね。私が常に思っているのは、我たちの発信する情報がバズらなくてもいいということです。展示会に参加した人から「展示会のことを投稿したら、はじめてバズりました!」とよく言われます。その背景には、私たちではなくお客さんが常に主役だという考えがあるんです。

萩原 実際、私が2023年11月に期間限定でオープンしていた“言葉禁止”でジェスチャーでしか注文できない不思議な喫茶店「言葉のない喫茶店」を投稿したところ、私のTikTokでは一番再生回数が伸びましたよ(笑)。
 
@onipro.tiktok お店で言葉を使わないで注文は可能か?という事で『言葉のない喫茶店』に行ってきました。Rand表参道で11月5日(日)まで期間限定オープン。ちなみに、無事アイスコーヒー注文できました。 #言葉のない喫茶店 ♬ オリジナル楽曲 - 萩原幸也
 
萩原氏が「言葉のない喫茶店」に来店し、注文している様子

明円 ありがとうございます。萩原さんのようにお客さんが投稿してくれる第三者発信がもっとも影響力があると思います。

※後編 「みんなが面白がってくれるものが好き」kakeru 明円氏が語る企画が実現するための秘訣 に続く
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