TとVがひとつになって~消費者とマーケティングの視点~ #02

ビッグデータ×パーソナルデータ ポイント統合でCCCが狙う高精度マーケティング【撫養宏紀取締役インタビュー】

前回の記事:
新Vポイント誕生、CCCが歴史あるTポイントの名前を捨ててまで追求したものとは 【撫養宏紀取締役インタビュー】
 2024年4月22日、カルチュア・コンビニエンス・クラブグループ(CCCグループ)のTポイントと、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)のVポイントが統合し、新生Vポイントとして新たなスタートを切った。統合によって会員数(有効ID数)は1.46億人に上り、日本の人口を超える。アクティブユーザーに絞っても8600万人が使っていることになり、国内外のVisa加盟店でも使えることから、「ポイント経済圏」の競争激化を象徴する動きとして、他のポイントサービスの動きと絡めながら、メディアで連日のように取り上げられた。

 新生Vポイントを運営するCCCMKホールディングス(CCCMKHD)と三井住友カード(SMCC)もまた、モバイルアプリの利用やクレジットカードの新規入会でポイントが付与されるキャンペーンを展開し、大盤振る舞いとも呼べそうな一大プロモーションで攻勢をかけた。「祭り」的なスタートダッシュが一息つき、真価を問われるのはこれからだ。

 Agenda noteの本連載は、新生Vポイント事業を中心で担ったキーマンに、消費者、そしてマーケティング領域に対してポイント統合がもたらす影響について連続インタビュー。第2回は第1回に続き、Vポイントの運営実務を担うCCCMKHDの撫養宏紀取締役に、マーケティング領域におけるポイント統合の意義を聞いた。
 

商品と紐づいたデータマーケティング


―― 前回はCCCがTポイントを始めた約20年前から貫いてきた思想や、「どこでも使える」ポイントを目指す理由についてお話を伺いました。マーケティングの観点からすると、今回の統合はどのような意義があるのでしょうか。

 それも実は、20年前から根本的に変わっていません。つまりユーザーデータを活用したマーケティングです。私たちがTポイントを始めたのは、先ほど述べた消費者にとっての利便性向上という目的の一方で、ポイントで提携するアライアンス企業さまの本業支援にデータが活用できることに着目したからです。ポイントを始めてみたらデータが活用できることに気づいたのでなく、データ活用によるマーケティング支援のトリガーとして、Tポイントが生まれたわけです。

 そのため、提携営業の際には単純に「ポイントを導入すれば集客につながりますよ」ではなく、コンサルティングを必ずセットにしてご提案してきました。アライアンス企業さまの本業を良くしていくことこそ、「世界一の企画会社」をビジョンとするCCCがTポイント発足当初からやりたかったことです。
 
CCCMKホールディングス 取締役
撫養 宏紀 氏

 アライアンス企業さまから見て、Vポイントと提携することの最大のメリットは、やはり膨大な会員数でしょう。既存のTポイントとVポイントの単純合算で1.46億人、アクティブユーザーだけで8600万人分の有効IDは、日本最大規模です。かなりの消費者がこのIDを持っていることになり、集客効果はもちろんのこと、データを活用した高度なマーケティングができるのが非常に強みだと思っています。

 もうひとつ大きなメリットとしては、Vカードクーポンです。Vポイントアプリを見れば随時、クーポンが更新されています。クーポン施策は一社だけでやってもなかなか認知が広がりませんが、プラットフォーム化してVポイントアプリにクーポンを出稿すれば、集客効果が期待されます。
 
Vポイントアプリの「Vカードクーポン」(公式サイトより)

 それに、今でこそモバイルアプリで「セット」や「エントリー」をすれば買い物の時に自動的にポイントが貯まる仕組みは多く見られるようになりましたが、この利便性の高さも、Tポイント時代から試行錯誤の末に行き着いたものです。

 最初にTポイントのクーポンサイトをつくった時はいわゆる視認性が悪くて、どこに何のクーポンあるのか分からない状態でした。見方を変えれば、私たちにはそういった、お客さまへの分かりやすさ、ポイントを活用した販促施策や効果検証についての20年間のノウハウの蓄積があります。その知見もまた、提携店へのご提案に生かせる強みだと自負しています。

―― Tポイントは登場当時、それまで「勘頼み」だった小売のマーケティングにデータ革命を起こしました。今回の統合でより高度なマーケティングが可能になるのはなぜですか。

 繰り返しになりますが、もともと、私たちがTポイントをフックに取り組もうとしたのがユーザーデータ、個人情報と購買情報の両方を生かしたデータ活用によるマーケティング支援でした。そのためTポイントは当初から、シングルIDごとに商品単位、SKU単位で購買情報を取得するということにこだわり、データに基づくマーケティング・コンサルティングを一貫して続けてきました。クレジットカードだと、誰がいつどこでいくら使ったかまでは把握できますが、商品単位の履歴まで取るのは大規模なコストがかかり、難しいのです。

 つまり、今回の統合でTポイントとクレジットカード決済が結びついたことで、15万5千店舗の提携店での商品まで含めた深い購買データと、国内750万店舗にのぼるVisa加盟店の広範なビッグデータとを組み合わせることができ、より精緻で高度なマーケティングが可能になるのです。アライアンス企業様に対して新店舗の出店や商品開発、メニュー改善など幅広い施策のご提案ができるのも、IDと商品、購買情報が紐づいているからです。

 データの良さというのは、サービスを提供する企業側から見える景色とは違う景色が見えてくることです。たとえばある飲料メーカーがアルコール度数の低いお酒を若い顧客向けに開発したとして、実際に購買層をリサーチすると、リタイアされた方が定年後に長く楽しみたいと買っていらっしゃることが分かったりします。そこで商品のコンセプトやターゲット、プロモーションの仕方も変わってきますよね。ビッグデータだけでなく、個人と商品が結びついた深いデータが組み合わさることで精度が格段に上がるのです。

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