CATCH THE RISING STAR #11
ポーラ「美しさは十人十色」に共感 若年層向けと高価格帯、2ブランドのコミュニケーションを担う若きマーケター【大田 桃子氏】
企業におけるマーケティングの重要性が増す一方、「マーケターの仕事は生成AIに奪われるのではないか」とも囁かれる昨今。そんな変革期に、マーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。
Agenda noteでは「Z世代」と一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。生まれた時からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第11回は、化粧品メーカーのポーラから入社3年目の大田桃子氏が登場。最若手にして2つのブランドを任され、ブランドコミュニケーションを一手に担う同氏が魅了された化粧品の「情緒的価値」と、普段から取り組む効果的な顧客リサーチの方法とは。
Agenda noteでは「Z世代」と一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。生まれた時からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第11回は、化粧品メーカーのポーラから入社3年目の大田桃子氏が登場。最若手にして2つのブランドを任され、ブランドコミュニケーションを一手に担う同氏が魅了された化粧品の「情緒的価値」と、普段から取り組む効果的な顧客リサーチの方法とは。
「売上につながる投稿」を徹底追及
―― 入社の経緯についてお聞かせください。
化粧品のマーケティングに関わりたかったのが入社の動機です。高校3年生の時に、オープンキャンパスでマーケティングの基礎的な講座に参加する機会がありました。その講座は「ドリルが欲しいという消費者は、そもそもドリルではなく穴が欲しいのである」という、マーケティングでは有名なたとえ話を題材にしたものでした。 たとえばショッピングモールに良い香りがするパン屋があり、お店の前にはベンチが置かれていたら、その何気ないベンチも実はマーケターが計算していて、「ちょっと歩き疲れたし、パンでも買ってひと休みしよう」というように人の心を動かし、行動させる狙いがあるという話も聞きました。買い物終わりにパンを買って一休みする、という選択は自分が主体的にしたつもりでも、実は計算されて動かされていたのかもしれないと思うと、マーケティングって面白そう、と感じました。大学では商学部に入り、ゼミで消費者行動を専門に学びました。
化粧品のマーケティングに着目したのは、「情緒的な価値」が購入の引き金になることが多い商材だと思ったからです。もちろん、化粧品としての機能や効能も重要ですが、「こんな自分になりたい」や「こんな自分になれるかもしれない」といった期待感やワクワク感もあわせてお客様に選んでいただける。そういう商材のマーケティングに携わりたいという思いがありました。
就職活動を進めていく中で出会ったのがポーラで、お客さま一人ひとりに向き合っているなと感じました。ビジネスなので、お客さまをある程度セグメントして、グループとして捉えることは、恐らくどの会社さんもマーケターもしていることだと思います。ただ、ポーラの場合、重要なビジネスモデルのひとつにサロン事業があり、ひとりのお客さまと同じ担当者が長く向き合って、肌を良くしていくこと、それぞれの美のサポートに真剣に取り組んでいるのが印象的でした。
加えてちょっとびっくりしたのが、ブランドのミューズを基本的に立てないという方針です。「こういう人が美しい」とゴールを決めるのでなく、「こういうふうになりたい」という思いに寄り添う、「美しさは人それぞれ、十人十色」という考え方にすごく共感して、入社を決めました。
大田 桃子 氏
ポーラ ブランドコミュニケーション部
ポーラ ブランドコミュニケーション部
―― 入社後はどのような業務を担当されていますか。
一貫してブランドコミュニケーション部で、商品の魅力をどう消費者に伝えていくかといったコミュニケーション戦略の立案や、具体的なプロモーション施策の企画・実行を担当しています。始めはスキンケア商品の「リンクルショット」のプロモーションを先輩に教えていただきながら仕事を覚え、1年目の冬から「ディエム クルール」という若年層向けのメークアップブランドをひとりで担当することになりました。最近ではディエム ククールに加えて、ポーラ最高峰のスキンケアブランド「B.A」も担当し、いずれもブランドの価値を伝え、新規のお客さまを増やすことを目指しています。
―― 1年目からひとりでブランドを担当するんですね。成果を感じた取り組みはありましたか。
もちろん、相談したい時にすぐ先輩に相談できる環境ではありますが、比較的少人数の部署なので、若手でもブランドコミュニケーションをひとりで担当することはあります。直近で成果を感じた仕事としては、担当するディエム クルールで、オフラインイベントを企画から実行まで一貫して指揮できたことです。インフルエンサーや一般のお客様を対象とした、4日間のイベントです。
もともと若年層向けのブランドであるディエム クルールは、コロナ禍という背景もあって、SNSでの話題化を狙う施策が中心でした。ただ、SNS上に投稿されるたくさんの口コミが、本当に売上につながっているのか。つながっているとしたら、なぜなのか。他社のブランドを含めた人気化粧品に関する口コミをXの投稿で遡って、どういう投稿が売上につながったのかを徹底的にリサーチしました。そのうちに見えてきたのが、売上につながるきっかけになった投稿はどれも、インフルエンサーさんが「お仕事」としてだけではなく、本気で推しているということが分かるものでした。形式的でなくちょっと崩れた日本語で、人間らしい「生っぽさ」「熱量の高さ」が伝わると、ユーザーは本気でその商品を買いたいと思うのでは、という仮説が立てられました。
ディエム クルールも比較的新しく、これから認知を広げてチャレンジしていくブランドです。仮説に基づき、熱量を持って発信してくれる「ファン」をたくさんつくろうと考えた時に、やはりこれまでのオンライン中心の施策だけでなく、インフルエンサーさんや一般消費者と熱量を上げていくオフラインの場が必要だと思いました。
そこからは実際にイベント内容を設計しました。ブランドの世界観が体感できるようなレイアウトにしたり、前半はインフルエンサー、後半は一般のお客さまも参加できるようにして、ブランドや商品について1対1でご説明できる機会を設けたり。ディエム クルールの特徴として、複数の色を混ぜて、様々な肌になじみやすい色合いを出す仕様になっているので、カラフルでインパクトのある見た目のアイテムが多いブランドになります。そのため、実際は誰でも簡単に使いこなしやすいアイテムばかりですが、一見すると難しいと感じるお客さまもいらっしゃると考え、美容部員やヘアメークアーティストと連携して、使いこなすためのデモンストレーションやメークアップショーなどのコンテンツも盛り込むようにしました。
初めてのイベント運営で、限られた予算の中でのアロケーションに苦戦し、一般のお客さまの動員については伸びしろがあったのではという反省は残りました。でも、最大の目的だった「熱量が高いファンと口コミをつくる」という点ではしっかりと成果が出て、一定程度、売上にも貢献できたと思っています。