NEW CEO INTERVIEW #02

dentsu Japanの「現在」と「未来」をどう見るか?【dentsu Japan 新CEO佐野傑氏】

前回の記事:
dentsu Japan 新CEOの佐野傑氏が語る、広告コミュニケーションの拡張
 企業のトップに、新たに就任したリーダーが考えるビジョンや戦略を深掘りし、彼ら・彼女らの挑戦と展望、企業の未来を紐解く新連載「NEW CEO INTERVIEW」がスタートした。

 第1回は、2024年1月1日、dentsu Japan CEO 兼 株式会社電通(以下、電通)代表取締役 社長執行役員に就任した佐野傑氏が登場。

 佐野氏は、これまで電通の執行役員(ビジネスプロデュース統括)やdentsu Japanの執行役員(BX/DXコンサルティング統括)を務め事業変革をリードし、電通グループ全体のグローバルなビジネス トランスフォーメーションを統括する立場で、グループ全体の成長に注力してきた。常に広告業界の未来を見据える佐野氏にとって、今後の業界はどのように見えているのか、前後編の2回に渡ってお届けする。前編では、就任半年での成果とAIの活用などについて聞いた。後編では、広告領域以外の事業に感じている可能性や「“真の”Integrated Growth Partner」になるために必要なこと、今後の展望などについて詳しく聞いた。
 

私たちの強みは統合的なソリューション提供による価値創造


―― 電通グループの売上総利益において、広告以外のコンサルティング事業の領域などが全体の約3割を占めていています。広告以外の事業の可能性についてお聞かせください。

 私たちは広告では比較的大きなシェアを獲得していますが、それ以外の領域はまだまだチャレンジャーの立場です。

 近年は業界の垣根が無くなりつつあり、それに伴い私たちが狙える市場が拡大しています。その中で、私たちが広告市場の成長率を上回る成長を実現できているのは、すなわちクライアントの皆さまが私たちの提供する価値を評価してくださっているからだと感じています。私たちの強みは、いずれの起点からでも統合的なソリューションを提供できることだと考えています。
 
dentsu Japan CEO 兼 電通 代表取締役 社長執行役員
佐野 傑 氏

1970年、神奈川県生まれ。92年東京大学経済学部卒業後、電通入社。ビジネスプロデュース部門を中心に多岐に渡る業務を担当。
2021年、電通 執行役員に就任。その後、イグニション・ポイント、電通コンサルティング、ISID(現電通総研)など国内グループ会社の取締役およびマーケティング・プロモーション、BX/DX領域を管掌。
22年より、電通 統括執行役員および電通ジャパンネットワーク(現 dentsu Japan)執行役員として、国内ビジネスプロデュース部門およびBX/DX領域を統括。
23年より電通グループ グループ・エグゼクティブ・マネジメントとして、グローバル全体のBX CEOを兼務。
24年、dentsu Japan CEO 兼 電通 代表取締役 社⾧執行役員に就任。

 私たちは自らを、「Integrated Growth Partner」と定義し、クライアント・パートナーの皆さまの持続可能な成長と、社会の活力を生み出すことを目指しています。AX(Advertising Transformation:高度化された広告コミュニケーション)、BX(Business Transformation:事業全体の変革)、CX(Customer Experience Transformation:お客さま体験の変革)、DX(Digital Transformation:マーケティング基盤の変革)の4つの領域に加え、将来的にはさらに多方面からクライアントの持続的な成長に貢献できると考えています。

 私たちが長年得意としてきた広告コミュニケーションは人の心を動かす事業です。その強みを生かしながら、すべての領域の価値を統合して提供していくことが私たちの独自性につながっています。

 私は社長に就任する前、グローバル全体のビジネス・トランスフォーメーション CEOを兼務し、BX領域の成長や海外展開をリードしてきました。そこで気づいたのは、海外ではクリエイティブ、メディア、CRM(顧客関係管理)、コンサルティング、システムなど、事業ごとに細かく会社が分かれていることです。一方で、dentsu Japanのように統合的にクライアントにアプローチできる会社は少ないと実感しました。加えて、スポーツ・エンタメ関連の事業も行っている会社はグローバルでは少なく、ユニークな存在だと感じています。

――広告領域における可能性は、どのようにお考えですか。

「広告をやめるのですか?」などの質問もよく聞かれますが、広告は私たちの中核事業の1つであり、現在も業績が伸びている非常に重要な領域です。やめることはありません。現在でも広告に対する投資は増えていますし、時代が変わっても大事なマーケティング手法であることは変わらないと考えています。

 また、近年は広告自体も進化し続けています。テレビは昔から視聴率というデータを取得できていましたが、誰が見ているのかまではわかりませんでした。現在はコネクテッドTVや店頭のリテールメディアによって、誰が見ていて、どのように触れて、購買したのか、その後、同じ商品をリピート購入したのか、ファンになったのかまで把握できるようになりました。今後も広告は進化し続けて、発展していくと考えています。

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