「迷ったら、削る」グローバル戦略の描き方 #02

沖縄の泡盛を「蒸留酒」としてポジショニングしたグローバルでの販売戦略の裏側【I&CO APAC高宮範有氏】

前回の記事:
ユニクロの品質の高さを伝えたキャンペーンから紐解くグローバルブランディングの成功法則【I&CO APAC高宮範有氏】
 ユニクロのAIチャットボット 「UNIQLO IQ」や世界中の着こなし・コーディネート情報を検索できる「StyleHint」のコンセプト・開発・UXデザインや、P&G パンテーンのキャンペーン「#この髪どうしてダメですか」などを手掛けてきた高宮範有氏。I&COの東京オフィスを2019年の開設時からリードし、2024年4月にI&CO APACの代表に就任した高宮氏が、I&CO創業から8年で培った実績と、アジア各国のスタートアップ約250社と情報交換する中で見えてきた国境を越えるブランディングに大切なことを解き明かしていく「『迷ったら、削る』グローバル戦略の描き方」連載。

 第2回は、沖縄のお酒である泡盛の「海乃邦」と「残波」のプロダクト開発や販売戦略をもとに、「グローバルに届く」コンテキストとは何かを深堀していく。
 

知られていないからこそできる、日本市場とは違う打ち出し方


 I&COは2023年10月から、沖縄県のお酒「琉球泡盛」の海外進出に当たり、プロダクト開発を支援しています。具体的には、国内でも人気のあった「海乃邦」と「残波」の2つの銘柄について、販路拡大と高付加価値化を目指して海外市場向けの専用ボトルのデザインと販売戦略を担当しました。

 そこで心がけたことは、日本での成功体験に囚われずに、ゼロベースで戦略を考えるということです。泡盛は国内での認知が高く、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで見かけることもあります。しかし、海外となるとまったくと言っていいほど認知されていません。その状況は、ピンチでもありますが、同時にチャンスでもあります。これまでの泡盛の日本での売り方や位置づけを気にせず、海外展開用にゼロから新たな戦略を立てられるからです。
  

 プロジェクトは「泡盛」について何も知らない人に、フラットに泡盛の魅力や楽しみ方を伝えるにはどうしたら良いかを突き詰めるところからスタートしました。そのときにベースとしたコンテキストは、海外での日本食人気と、日本酒やジャパニーズウィスキーが人気であり、高値で取引されていることです。

 シンガポール国内では、輸入されるお酒は税金が高く、倍以上の値段になることも多いのですが、それでも日本酒とジャパニーズウイスキーは、飲食店でもスーパーマーケットなどの小売店でも必ず置かれている人気商品です。また、寿司や焼肉、カレーやラーメンなど日本食のレストランが、シンガポールのモールや繁華街で数多く営業しています。今回のプロジェクトも、この日本のモノづくりや食への高い評価を追い風に展開したいと考えました。

 そういったリサーチをもとに、たどり着いた訴求点は大きく2つです。ひとつは「泡盛は、ウイスキーのようなハードリカーであること」、もうひとつは「熟成年数によって価値が高まるお酒であること」です。ボトルのラベルは、この2つのメッセージが一目で伝わるようにデザインしました。
  
泡盛の魅力を伝えるために「グローバルに届く」コンテキストを意識してデザインされた「残波」と「海乃邦 」

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