「迷ったら、削る」グローバル戦略の描き方 #03

海外展開する商品パッケージに日本語を使う意図とは?現地の顧客を理解する“匙加減”の大切さ

前回の記事:
沖縄の泡盛を「蒸留酒」としてポジショニングしたグローバルでの販売戦略の裏側【I&CO APAC高宮範有氏】
 ユニクロのAIチャットボット 「UNIQLO IQ」や世界中の着こなし・コーディネート情報を検索できる「StyleHint」のコンセプト・開発・UXデザインや、P&G パンテーンのキャンペーン「#この髪どうしてダメですか」などを手掛けてきた高宮範有氏。I&COの東京オフィスを2019年の開設時からリードし、2024年4月にI&CO APACの代表に就任した高宮氏が、I&CO創業から8年で培った実績と、アジア各国のスタートアップ約250社と情報交換する中で見えてきた国境を越えるブランディングに大切なことを解き明かしていく「『迷ったら、削る』グローバル戦略の描き方」連載。

 第3回は、I&COがシンガポール進出時に行ったリサーチや現地の顧客訪問の経験をもとに、グローバルマーケティングに取り組む上での「顧客を理解すること」の大切さを伝えていきます。
 

そこに、喜んでくれる人はいるか。現地の声を拾う


 I&COがシンガポールに進出したときの経験をもとに、今回は「顧客を理解すること」について伝えます。まず自分たちが本当に海外進出するべきなのかをしっかりと検討することから始めましょう。そのためには自社商品の「強み」や「売りになる点(USP:Unique Selling Proposition)」、「課題」を知っていることが前提となります。

 自分たちの商品を必要としてくれる顧客はどこにいるのか、日本以外にもいそうなら海外市場に挑戦してみる、そうでないなら国内に注力するほうが良い場合もあります。進出したい(=届けたい)エリアにいる顧客の興味関心と自分たちの強みが重なるところを探り、戦略を立てていきます。

 たとえば、I&COはプレゼント動画制作サービス「Gifvie(ギフビー)」を運営しており、その英語版をスタートさせるときには米国・ニューヨークのメンバーに実際に使ってもらってフィードバックをもらいました。また、テストとしてインドやシンガポールなど英語が使われている地域に広告出稿し、その反応や問い合わせの内容を精査しています。本格的な展開の前段階として、こういったリサーチはとても有効になります。



 さらに可能であれば、現地に赴き、そこに住む人々を直接自分の目で見て確かめてほしいと考えています。オンラインで事前に何でも調べられる時代ではありますが、現地に流れる空気や人々の息づかいまでは得られません。

 そのため一度は現地に行くべきですし、数日ではなく、できるだけ長期の日程を組むことをお勧めします。海外進出の第一歩としては、調査報告書を読むよりも、自分たちで行ってみるほうが必ず価値があります。

 僕たちもシンガポールへの進出にあたり、その2年前からシンガポールを中心にマレーシア、タイ、インドネシアなどの東南アジア各国に出向き、250社以上のスタートアップのファウンダーと会ってきました。彼らの課題や視点を共有してもらうことで、ようやく理解できるようになったことも多いです。また、現地で街を歩き、食事や買い物をした時間の中で、それぞれの市場にチューニングする感覚を養うことができました。
  
高宮氏が本連載の第2回「沖縄の泡盛を『蒸留酒』としてポジショニングしたグローバルでの販売戦略の裏側【I&CO APAC高宮範有氏】」で紹介した沖縄の泡盛を実際に現地の方に振る舞っている様子

  
沖縄の泡盛がシンガポールに進出する前に、現地メディアを招いて試飲会を開催したときの様子

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