CATCH THE RISING STAR #16
ミツカンの「健康オタク」若手マーケターが目指す「押し付けない」健康社会【後藤友政氏】
企業におけるマーケティングの重要性が増す一方、「マーケターの仕事は生成AIに奪われるのではないか」とも囁かれる昨今。そんな変革期に、マーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。
Agenda noteでは「Z世代」と一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。生まれた時からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第16回はミツカンから入社2年目マーケターの後藤友政氏が登場。同社を代表する納豆事業で新商品開発を手掛ける後藤氏は、食育に熱心な家庭で育った「健康オタク」。事業を通じて周囲の人々を健康にしたいと考える一方、イノベーションを起こすには多様な考え方を理解する必要性も。それぞれの健康への考え方に寄り添ったマーケティングの形とは。
Agenda noteでは「Z世代」と一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。生まれた時からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第16回はミツカンから入社2年目マーケターの後藤友政氏が登場。同社を代表する納豆事業で新商品開発を手掛ける後藤氏は、食育に熱心な家庭で育った「健康オタク」。事業を通じて周囲の人々を健康にしたいと考える一方、イノベーションを起こすには多様な考え方を理解する必要性も。それぞれの健康への考え方に寄り添ったマーケティングの形とは。
「食から健康」ミッションに共感
―― 入社の経緯を教えてください。
私の両親は食や健康にこだわりがあり、「ちょっと値が張っても健康でいられるならばそれが一番だ」とよく言っていました。その影響で私も大切な人たちに健康になってもらえるような仕事をしたいと考えるようになりました。
ミツカンは「やがて、いのちに変わるもの。」をミッションに掲げています。これを軸にして健康に貢献する商品ラインアップが揃っているので、ここで働くことができれば、少なくとも自分の周囲の人くらいはミツカンの食品を食べて、健康になってもらえるんじゃないか。ゆくゆくは社会全体が健康になるための仕事ができるのではないか。そんなふうに自分の目標とミツカンの理念が合致して、入社しました。
後藤 友政 氏
ミツカン マーケティング部 チルド企画部
ミツカン マーケティング部 チルド企画部
私よりひとつ上の代から新設されたマーケティングコースを希望したのは、大学でマーケティングを専攻しており、自分の経験を生かせると思ったからですが、元々は経営戦略に興味がありました。何も知らない大学生だったので、経営というと「イーロン・マスクのようなカリスマやセンスがある人がパッとひらめいてヒット商品を生み出したり、経営戦略を立案したりするんだろうな」という、漠然としたイメージしかなかったんです。
しかし実際に経営戦略を学んでみると、地道に体系化して、戦略を立てたり分析したりしていると知り、すごく面白いなと感じました。その流れでマーケティングにも興味がわき、ゼミで消費者行動論を学びました。実際に生活者にインタビューをしてみたり、300人規模のネット調査をして統計的に分析したりしながら、定量と定性面から地元企業にさまざまな戦略提案をしてみるといった活動をしました。
―― 希望するマーケティング職となって、どんな業務を担当されているのですか。
入社以来一貫して、納豆事業の主に新商品開発を担当しています。納豆とひと口に言ってもさまざまなカテゴリーがあって、「金のつぶ パキッ!とたれ とろっ豆」のように醤油の味わいがベースの納豆もあれば、「金のつぶ 梅風味黒酢たれ」のようにたれの味わいが特徴的なものもあります。
商品ごとにポジショニングが違っていて、たとえば「とろっ豆」はお子さんがいる家庭に比較的多く買われているなど、購買者層に特徴があります。それぞれの生活者が自分に合った商品を選択できる状態が望ましいと考えており、現在は若年層へ向けた商品や、健康機能に特化した商品の開発に取り組んでいます。
私が関わった新商品で言えば、「納豆効果 腸内ケア」は機能性表示食品で、商品に含まれる納豆菌K-2株芽胞は、腸内のビフィズス菌を増やすことで腸内環境を改善し、おなかの調子を整えることが報告されている商品です。また、「金のつぶ たっぷりおだし」は、たれがたっぷり入っている上に、豆が柔らかめなのが特徴。従来の納豆の多くは、豆が少し硬めで粘りがしっかりしていて、味もしっかりした醤油感のある味わいなのですが、さらっとした口当たりとこだわりのおだしの香りで優しい食べ心地になっています。
開発秘話としては、消費者調査による気づきがあります。当社の主力商品である「とろっ豆」や「たまご醤油たれ」は、他商品と比較すると若い消費者に人気があるというデータがあり、実際に調査してみると「とろっ豆」は柔らかい食感が、「たまご醤油たれ」は大容量のたれが支持要素の一つであることが分かりました。
意外に思われるかも知れませんが、納豆は若い消費者も十分に食べています。ただ、購入率や購入頻度は年代が上がるにつれて多くなる傾向があり、納豆の持っている価値を若年層に届ける余地はまだまだ存在していると考えています。「柔らかな豆」と「たっぷりのたれ」、若年層に人気のある2つの商品から「いいとこ取り」をしているのが「たっぷりおだし」です。現代のお疲れ気味な若年層にも寄り添う、新時代のスタンダードを目指しています。
私の入社前から開発が進んでいた商品ですが、今年から担当することになりました。今お話ししたようなストーリーや、召し上がっていただきたいシーンも含めて、より魅力を伝えられるようなマーケティング施策ができないか、検討しているところです。