【読書の秋】トップマーケターが本気で推したい1冊 #3

【読書の秋】スープストックトーキョー 工藤萌氏、リクルート 萩原幸也氏が本気で推したい1冊

前回の記事:
【読書の秋】シンクロ 西井敏恭氏、はなまる 髙口裕之氏
 近年は「長すぎる夏」とはいえ、それでも夜は涼やかな虫の音をBGMに、「読書の秋」を堪能したい季節になってきた。働いていると本を読めないという実感をそのままタイトルにした新書も話題になった昨今、それでも成長したいマーケターの一助になるために、トップマーケターが「本気で推したい1冊」を紹介する。バラエティー豊かな選書から、ぜひ気になる本を見つけ、ビジネスの成功につながる新たな視点とアイデアに触れてほしい。
 

スープストックトーキョー 取締役社長 工藤萌氏


本気で推したい1冊:9割の社会問題はビジネスで解決できる
田口一成(著)、PHP研究所

 

 個人的に交流があり、尊敬する経営者の1人であるボーダレスジャパン 代表取締役社長の田口一成さん。その著書である『9割の社会問題はビジネスで解決できる』は、私にとって心に火を灯す宝物のひとつです。

 特に、マーケティングという人の認識や行動を変える力を持つ仕事に携わる方々や経営者を目指す方々に、ぜひ読んでいただきたい1冊です。また、「何のために働くのか」とモヤモヤしている方にも、強くおすすめします。

 資本主義の本質は効率の追求ですが、その陰で取り残される人々が出てしまうのが現代の社会構造です。こうした社会の中で、私たちがビジネスを通じて何を成し得るのかという問いは非常に重要です。本書は、「非効率をも含めてビジネスをリデザインする」という発想の転換を促し、理想論にとどまらない具体的な示唆を与えてくれます。

「生まれた時よりも、きれいな社会にして死んでいく」というモットーを持つ田口さんの言葉は、とにかく格好よく、行動を奮い立たせてくれるので、ぜひ手に取っていただきたいです。
 

リクルート マーケティング室 クリエイティブディレクター/部長 萩原幸也氏


本気で推したい1冊:劇光仮面
山口貴由(著)、小学館

 

 私がオススメする書籍は、『劇光仮面(げきこうかめん)』(小学館)です。『シグルイ』(秋田書店)などで知られる山口貴由先生による、熱「狂」的作品です。とにかく、モノづくりに向き合う人間には読んでいただきたい。そんな作品です。

 本作は、これまでの山口作品とは異なり、舞台は現代社会、登場人物は等身大の人間。特殊能力があるわけでも無いどころか、何者にも成れずに鬱屈を抱えた生活をおくっています。その一方、彼らが憧れた“昭和特撮”に異常な解像度でフォーカスしながら、その特撮を生み出した創造主の思いを汲み取り、その思いを受け取った者たちがなすべきこと、もし怪人や怪獣が現実世界に現れた場合の対応手段として、特撮で描かれた対応が成立するのか?などという思考実験…。そして、彼らがつくり上げる特撮衣装、通称「劇光服」の実制作を通した検証が繰り返されます。

 これは何者でもない存在が特撮ヒーローになれると信じきり、本気で変身しようとする、狂気の物語なのですが、この狂気こそ人を魅せる作品をつくり上げるための源なのだと、改めて感じられるのです。

 また、1冊ということで1巻目をまず推しますが、巻数を重ねるごとに驚きの展開を迎えていくのも見どころです。

※編集部注※記事内で紹介した書籍をリンク先で購入すると、売上の一部がAgenda noteに還元されることがあります。

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