CATCH THE RISING STAR #18
大丸松坂屋3年目マーケターが百貨店を起点に目指すテクノロジー活用と街づくり【近藤慎一郎氏】
企業におけるマーケティングの重要性が増す一方、「マーケターの仕事はAIに奪われるのでは」とも囁かれる昨今。そんな変革期に、マーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。
Agenda noteでは「Z世代」と一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。生まれた時からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第18回でインタビューしたのは、J.フロント リテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店の入社3年目マーケターの近藤慎一郎氏。これまで百貨店を軸とした販促やインバウンド関連業務を担い、最近は親会社であるJ.フロント リテイリングの業務も兼務するなど、活躍の幅を広げる同氏が、得意とするテクノロジー活用によって目指す未来とは。
Agenda noteでは「Z世代」と一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。生まれた時からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第18回でインタビューしたのは、J.フロント リテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店の入社3年目マーケターの近藤慎一郎氏。これまで百貨店を軸とした販促やインバウンド関連業務を担い、最近は親会社であるJ.フロント リテイリングの業務も兼務するなど、活躍の幅を広げる同氏が、得意とするテクノロジー活用によって目指す未来とは。
インスタフォロワー8000人増
―― 大丸松坂屋百貨店に入社した経緯を教えてください。
通っていた京都の大学で大丸松坂屋百貨店の寄付講座を受けたのがきっかけです。J.フロント リテイリング グループには、大丸松坂屋百貨店が担う百貨店事業や、パルコなどのショッピングセンター事業のほかに、不動産開発事業があります。その事業の一環として、当時行われていた「アーバンドミナント戦略」という百貨店などの店舗を核に街全体を盛り上げていくマーケティング施策について、社員が講座で話してくれて、すごく興味を抱きました。(※編集部注:不動産開発事業は現在、J.フロント都市開発に移管されている)
元々、関西では「大丸」は非常に歴史のある、地域に貢献する百貨店として知られています。不動産開発においても、たとえば築100年を超える京町家のリノベーションや、神戸でも旧居留地の建物を再活用して百貨店周辺店舗との共栄を図ったりしており、必ずしも新築するのではなく、既存の建物を積極的に利活用しようとしている姿勢に共感しました。
近藤 慎一郎 氏
大丸松坂屋百貨店 本社 営業本部 営業企画部 販売促進・インバウンド担当
大丸松坂屋百貨店 本社 営業本部 営業企画部 販売促進・インバウンド担当
街づくりに興味があったので、就活ではデベロッパー系を中心に考えていたのですが、このようなアップサイクルの姿勢に惹かれたことや、寄付講座で知り合った社員の方がご本人にはメリットがないのにその後もずっと親身になって進路相談に乗ってくれて、「人」に魅力を感じたことなどからJ.フロント リテイリング グループへの入社を決めました。
―― 入社後はどのような仕事を担当していますか。
松坂屋静岡店で5カ月間、催事場の販売員を務めた後、本社配属になり、現在の販売促進チームに入りました。全国の百貨店にまたがる販促施策を企画する担当で、私がメインで推進したのが「エコフ リサイクルキャンペーン」でした。春と秋の2度、全国の店舗を5日~1週間ずつキャラバンし、不用になった衣料品や靴、バッグ類を回収し、その代わりにクーポンを配布するという取り組みです。今でこそ、不用品の回収リサイクルは広がっていますが、自社商品かどうかに関わらず回収する取り組みは、少なくとも百貨店としては、当社が先駆けて2016年から開始しました。
私が担当してからの大きな変化としては、配布するクーポンを紙からアプリへと段階的に移行したことが挙げられます。その判断をしたのは上層部ですが、サステナブルの観点からも、私もアプリに移行すべきだと思っていたので、熱意を持って取り組みました。この時期までにアプリ移行率何%を目指す、といった提案をしたり、約1年かけて店舗やお客さまに周知したりしました。客層によってはハードルが高い店舗もありましたが、現在、このキャンペーンはアプリ率100%を達成しています。
キャンペーン参加人数・回収点数では、私が初めて担当した2022年秋のキャンペーンで過去最高を記録しました。ちょうどコロナ禍で断捨離する人が増えていたことや、人流が戻り始めたタイミングだったこと、環境意識が高まっていたことなどが影響したと思います。「クーポンはいらないから回収してほしい」というお客さまの声があるのをキャッチして、回収専用のレーンを設けた店舗もありました。
もちろん、クーポンを配ることによる販促効果を期待したキャンペーンではありましたが、回収のために店舗に足を運んでいただけるだけでも集客効果はありますから、事業の面でも、サステナブルの点からも、ニーズに応える意義があるという判断でした。
個人的に手応えを感じたのは、キャンペーンと並行して担当した「Think GREEN」という企画です。サステナブルな取り組みや商品を発信するInstagramで、フォロワー数を8000人ほど増やしました。アカウントは2021年に開設され、フォロワー1万人を目標に運用されていましたが、私が担当した当初は4000人ほどでした。そこで単に綺麗な写真を載せるだけでなく知識系の投稿を増やして、フォロワーにとって学びになるような企画をしたり、各店舗のInstagramアカウントとコラボしたりして、私の任期中に1万2000フォロワーまで伸ばすことができました。このInstagramは、さきほどご紹介したリサイクルキャンペーン「エコフ」のクーポンアプリ化の周知にも活用しました。
2023年9月からは同じチーム内でインバウンド担当になり、決済関連のプロモーションとWebサイトのリニューアルプロジェクトに携わっています。決済関連では中国など海外の主要キャッシュレス決済サービスと提携し、訪日客が普段自国で使っている決済アプリを当社の百貨店でも使用できるようにする取り組みを進めています。その調整は英語で進めるのですが、細かな決済関連の用語などに慣れておらず、勉強中です。
インバウンド向けサイトのリニューアルについてはまだ準備中ですが、日本国内のお客さまとの関心の違いなどを意識したいと考えています。訪日客はInstagramなどのSNSから日本の情報を得ることが多く、特に一部の有名ブランドやレストランへのアクセスが多いといった情報もあるので、海外のお客さまのニーズに的確に応えられるサイトにしたいです。