TOP PLAYER INTERVIEW #75

「復刻版Jリーグカレー」に秘められた“核”となる企画の重要性【竹渕祥平氏】

前回の記事:
31年ぶり「Jリーグカレー復刻」の企画者 竹渕祥平氏が明かす、話題化させるための思考法
 2024年5月、Jリーグは1993年の開幕年に発売した「Jリーグカレー」を31年ぶりに復活させた。当時、「CM好感度ランキング」で数カ月にわたり連続1位(CM総合研究所調べ)を記録したテレビCMを忠実に再現しつつ、令和版として復刻した動画を5月15日の「Jリーグの日」を記念してYouTubeに公開した。この動画には当時出演していたラモス瑠偉氏や、子役として登場していた「まさおくん」が父親役として再出演し、SNSなどのキャンペーンと連動させることで周年企画を盛り上げた。

 今回は、本企画の仕掛け人である日本プロサッカーリーグ(Jリーグ) 事業マーケティング本部 プロモーション部 プロモーション・ブランド戦略担当チーフオフィサーの竹渕祥平氏にインタビューを実施。「Jリーグカレー」復刻の企画から紐解く、話題化に必要なコミュニケーション戦略とは何か。前編では話題となった「復刻版 Jリーグカレー2024年篇」の誕生秘話と31周年企画としての全体像、竹渕氏の転職理由などについて詳しく紹介した。後編では、周年企画が大きな話題を呼ぶことのできた要因と今後の展望などについて詳しく聞いた。
 

まずはひとつ、核となるものをつくる


―― 今回の「復刻版Jリーグカレー2024年篇」や31周年企画を振り返り、多くのファン・サポーターの間で話題化することができた要因は何だったのでしょうか。

 改めて振り返ると、ファミリーマートの足立光さんがX(旧Twitter)を「着火点」かつ「ブースト装置」として生かしたメディア戦略に関するプレゼンを、話されていたことが非常に記憶に残っています。

 そのプレゼンを参考にしつつ、今回の企画ではファン・サポーターが何年もJリーグを支えてくれていることに目を向けた企画にするほうが話題を生むのではないかという仮説を立てました。
 
日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)
事業マーケティング本部 プロモーション部 プロモーション・ブランド戦略担当チーフオフィサー
竹渕 祥平 氏

 株式会社ミルボンへ入社後、 同社で新ブランドの立ち上げ、オウンドメディア、ソーシャルメディアマーケティング、コーポレートブランディング、EC(電子商取引)事業の立ち上げなどをけん引。 2024年よりJリーグ事業マーケティング本部にてプロモーション・ブランド戦略を担当。

 まずは熱量が高いファン・サポーターに向けたきっかけとして核となる企画をしっかりとつくるように進めました。それが「復刻版Jリーグカレー2024年篇」です。まず、ファン・サポーターがSNSで最初に話題にしてくれました。その後、この企画 を取り上げていただけたのがWebメディアで、そこから話題化することでコア層からライト層までリーチを広げることができました。
 
復刻版Jリーグカレー2024年篇

 ただ、そこで終わってしまうとライト層や離反層の態度変容まではいきません。そこで重要になるのが、先ほどお伝えしたようにテレビ露出です。そこから、改めてSNS上で話題になりファン・サポーター以外の人にも届きました。それぞれのメディア特性とどの層にとどいたかは調査結果でも実証されています。

 振り返ると話題化するためには、コアな企画をつくり、それをローンチする前段階から丁寧にコミュニケーションするように戦略的に設計していくことが必要だと思います。



 企画を考えるときは、最近はこれが流行っているから真似してみようかなど、どうしてもパーツパーツで考えがちです。単発の企画であれば、それでもいいかもしれませんが、プロジェクトとして長期的に取り組んでどこかに山をつくる必要がある場合は、仮説をきちんと立てて全体のストーリーを設計する必要があります。

 この戦略段階では、ポイントが2つあります。ひとつは全体像を俯瞰しつつ、細かい施策はそれぞれの粒度を細かく設計することです。いわゆる鳥の目と虫の目の考え方です。もうひとつは、企画を形にするために外部のパートナー、社内のメンバーを含めたチーム編成と、関係各所の巻き込みを丁寧にやることだと思います。

 自分よりも優秀なメンバーやパートナーを集めて適材適所でチームを構成することで、企画が幾重にも広がるようになります。そこがすごく重要だと思います。

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