広報・PR #18

都市型水害・台風、2024年の災害事例から気候変動時代の広報マニュアルを考える

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効果的な企業の災害広報のあり方


 2024年、日本列島は厳しい気象状況に見舞われている。お盆には台風7号が東日本を直撃し、8月末には台風10号が西日本を中心に大きな被害をもたらした。また、都市部でもゲリラ豪雨が頻発し、東京の麻布十番や渋谷といった繁華街が冠水する事態となった。さらに、東海地方での突発的な豪雨の影響で、東海道新幹線が運転を見合わせた。

 このような状況の中、企業の災害対応、特に広報活動の重要性が急速に高まっている。南海トラフ地震も懸念される中、企業は過去の経験を活かしながら、より迅速かつ効果的な広報戦略の構築が迫られている。2011年の東日本大震災以降、企業の災害広報は事後対応中心から、事前準備と事後フォローアップを含む包括的なアプローチへと大きく変化した。今や情報の透明性や迅速性、双方向コミュニケーション、そして社会貢献活動との連携が不可欠となっている。

 激化する自然災害に対し、企業はどのような広報戦略を構築すべきなのか。最新の災害事例を踏まえ、効果的な企業の災害広報のあり方を考えたい。
 

災害対応マニュアルの策定と更新


 効果的な災害広報の基盤となるのが、綿密に策定された災害対応マニュアルである。想定されるリスクの洗い出し、対応体制の構築、情報発信の手順などを明確化する必要がある。特に、近年の災害の特徴を踏まえ、ゲリラ豪雨や線状降水帯など突発的な気象現象にも対応できるよう、柔軟性を持たせることが重要だ。

 マニュアルの策定にあたっては、以下の点に注意が必要である。

1. リスクの洗い出し
自社の事業特性や地理的条件を考慮し、想定される災害リスクを網羅的に洗い出す。特に、都市型水害や局地的豪雨など、近年増加している災害タイプにも注目する。

2. 対応体制の構築
災害対策本部の設置基準、メンバー構成、役割分担を明確にする。リモートワークの普及を踏まえ、オンラインでの対応体制も整備する。

3. 情報収集・分析の手順
気象庁の警報や地方自治体の避難情報など、信頼できる情報源からのリアルタイムな情報収集方法を確立する。

4. 情報発信の基準と手順
どのような情報を、誰が、いつ、どのように発信するかを明確にする。SNSの活用方法も含める。

5. ステークホルダー別対応方針
従業員、顧客、取引先、地域社会など、ステークホルダーごとの対応方針を策定する。

6. 訓練計画
定期的な災害対応訓練の実施計画を盛り込む。オンラインでの訓練方法も検討する。

 マニュアルは少なくとも年1回は見直し、人事異動や組織変更、新たな災害リスクなどを反映させる必要がある。また、実際の災害対応や訓練の結果を踏まえ、常に改善することが重要だ。

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