日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #52
商品価値を「世の中ごと化」して伝える。ゼスプリ新CMとW杯優勝アルゼンチン企画の共通点
36年ぶりW杯優勝、選手の帰国をリアルタイムに追跡
「世の中ごと化」で成功した海外事例としてすぐに思い浮かんだのは、PedidosYaというアルゼンチンのトップ・フードデリバリー会社(ウーバーイーツや出前館のような)の「WORLD CUP DELIVERY」です。この事例は、カンヌライオンズ2023でモバイル部門グランプリなどを受賞しました。
2022年12月18日に、スーパースターのメッシを擁するサッカーのアルゼンチンチームは、36年ぶりにワールドカップ(カタールで開催)で優勝します。サッカーに関して熱狂的なアルゼンチン国民は歓喜に湧きますが、優勝トロフィーとチームメンバーがいつどのように帰国するのかの情報がなかなか入ってこないため、人々はヤキモキしていました。
そこに多くの人の、いわば小さな社会課題を発見したPedidosYaは、自力で優勝トロフィーとメンバーを乗せた航空機の経路とフライト日程を割り出し、リアルタイムで追跡し、PedidosYaアプリで見られるように設定します。PedidosYaがふだんフードデリバリーに関して、オーダーした食べ物がいまどの道を通ってどの辺りにいるか追跡できるのと同じ形で…。
PedidosYaのワールドカップ・デリバリーの事例ビデオ
優勝決定の16時間後には、PedidosYaアプリのユーザーである600万人(全人口の約13%)に、「あなたのオーダーはお届け途中です(リアルタイムでフォローするためにここをタップしましょう)」というメッセージを送ります。特に食べ物をオーダーしていない人に対してもです。何もオーダーしていないユーザーの一部は困惑しますが、タップしてみると優勝トロフィーの場所のことだと分かるという仕組みです。
結果としてこの施策は、多くの人に熱狂的に受け入れられ、一時はSNSでのトレンドランクでトップに立ったといいます。
「えっ!そんなに少しだけで良いの?」と不安に感じられるくらいに、商品やサービスの直接的な特徴を訴えることをせずに、「関連性のある社会課題=世の中ごと」を中心に施策を考えてみる。そんな手法のほうが、結果として、商品やサービスの価値を高めることに繋がる。そんな時代なのかもしれません。
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