【読書の秋】トップマーケターが本気で推したい1冊 #06

【読書の秋】青山商事 藤原尚也氏、店舗のICT活用研究所 郡司昇氏が本気で推したい1冊

前回の記事:
【読書の秋】ソーダストリーム 出口昌克氏、パナソニックコネクト 関口昭如氏が本気で推したい1冊
 涼やかな虫の音をBGMに「読書の秋」を堪能したい季節。働いていると本を読めないという実感をそのままタイトルにした新書も話題になった昨今、それでも成長し続けたいマーケターの一助になればと、トップマーケターたちの「本気で推したい1冊」をご紹介する。バラエティー豊かな選書から、ぜひ気になる本を見つけ、ビジネスの成功につながる新たな視点とアイデアに触れてほしい。
 

青山商事 デジタルコミュニケーションヘッドオフィスゼネラルマネージャー 藤原 尚也 氏


本気で推したい1冊:1人で100人分の成果を出す 軍師の戦略
皆木 和義(著)、クロスメディア・パブリッシング

 

「歴史から学ぶことは多い」と、私は思っています。過去の成功も失敗体験もいくつもの歴史が物語っているので、「人・物・金」の動き、そして「世論」など刻々と変わる戦国時代の変化にどう対応して、成果を出したのか? そういったことを改めて整理して知ることができる推しの一冊です。

 私たちを取り巻く環境はさらに複雑化し、予測できない変化が常に起きています。しかし、社内や業界の中にいると、その変化のスピードに気が付かない、もしくは遅く感じている可能性があります。物事を俯瞰して大きく捉え、そして現実の視点とのGAPをどう埋めていくのか? その思考力と実行力が求められています。電子書籍版もありますのでぜひ、読んでもらえたら嬉しいです。
 

店舗のICT活用研究所 代表 兼 小売DX合同会社 代表社員 郡司昇氏


本気で推したい1冊:名著の話 僕とカフカのひきこもり
伊集院 光(著)、KADOKAWA

 

 私は『名著の話 僕とカフカのひきこもり』を紹介します。難解な1冊の名著を100分で読み解いていくNHKの番組「100分de名著」で出会った約100冊の中から、司会の伊集院光氏が心に刺さった3冊を厳選し、名著をよく知る3人と再会して対談した書籍です。

 取り上げている中の1冊が柳田國男の『遠野物語』です。原著は高校の教科書で一部分を目にした程度でしたが、この書籍を読んで驚かされる部分が多数ありました。

 晩年の三島由紀夫が『遠野物語』を名著だと言っているのですが、その理由が「データでありながら文学であるという、実に矛盾していることがあの作品の中では実現している」からです。実際の地名、具体的な本当の人物名、出来事などを元にしていながら、適度に「盛る」ことで文学に昇華しているというニュアンスに私は感じました。

 さて、55話の「河童」の話です。現在、岩手県の遠野といえば地域活性化にも河童のキャラクターを活用しています。この話は「河童の子どもを産んで、その子を殺してしまう」という話です。これは「子殺し」の話です。前近代の日本では家を維持するための、間引きという習俗が普通に行われていました。その事実を、河童によって文学として昇華させたのです。

 なお『遠野物語』の初版を読んで愛読者となった芥川龍之介はのちに『河童』という小説を書きました。その中では、生まれてくる直前の子どもに生まれたいかどうかを尋ねて「嫌だ」と言えば中絶をする「子ども優先の出産」が当たり前の河童社会が表現されています。

 河童の他にも、座敷わらしや神隠しについての考察がこの本の中ではわかりやすくされています。いずれも、裏には真実が存在しています。

 昨年、遠野に行った際には、デフォルメされた河童のキャラクターが道の駅やお土産物に数多く採用されている光景を眺め、時の流れと伝承の変化を感じました。この光景をどう眺めるかは「知」の有無にあり、マーケターは学び続けることが重要だと考えます。


※編集部注※記事内で紹介した書籍をリンク先で購入すると、売上の一部がAgenda noteに還元されることがあります。

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