【読書の秋】UCCジャパン 里見陵氏、ベストインクラスプロデューサーズ 菅恭一氏が本気で推したい１冊

 

UCCジャパン 執行役員 サステナビリティ経営推進本部 里見 陵 氏

本気で推したい1冊：「専門家」以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書
西山 茂（著）、東洋経済新報社

 
 今回私がオススメしたいのはファイナンスの本です。「えっ、マーケティングじゃないの？」と思われるかもしれませんが、マーケターの方にとってマーケティング領域を深めた“次”に知識を深める必要があるのは“ファイナンス”ではないかと私は思っています。

 西山茂さんの本との出会いは、大学生の頃に読んだ『企業分析シナリオ』（東洋経済新報社）『MBAアカウンティング』（ダイヤモンド社）だったと記憶しています。非常に分かりやすく、楽しく読み進められたことを覚えています。

 私の推しの『「専門家」以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書』は、財務・経理部門以外の方々が“ざっくり”財務会計・管理会計・ファイナンスの重要ポイントを理解できるというすばらしいコンセプトの本です。

 皆さんは「販促費用の費用対効果をきちんと営業利益ベースで示してよ」や「バンバン広告ばっかりにお金を使って、コスト意識が低いんじゃないの？」など、経営陣やファイナンス部門から言われていないでしょうか？

 やはりトップマーケターたるもの、経営陣やファイナンス部門とも共通目線やファイナンス的な数値をもって議論したいですよね。ぜひ本書を入口にその他の西山さんの書籍も読んでいただき、ファイナンスもしっかり分かる一段上のマーケターになっていただけると嬉しいなと思います。
 

ベストインクラスプロデューサーズ 代表取締役社長 菅恭一氏

本気で推したい1冊：エフェクチュエーション
サラス・サラスバシー（著）、碩学舎
 
 エフェクチュエーションとは、米国ヴァージニア大学の経営学者であるサラス・サラスパシー教授が研究から導いた「高い不確実性に対して予測ではなく、コントロールによって対処する思考様式」です。近年、従来の予測合理的なアプローチでは対処しきれない環境で有効な思考様式として注目を集めています。

 ざっくり言うと、次の5つの原則が、熟達した起業家に対する研究から導かれた共通する思考様式で、誰でも活用できるものとされています。

① 手中の鳥の原則
② 許容可能な損失の原則
③ レモネードの原則
④ クレイジーキルトの原則
⑤ 飛行機のパイロットの原則

 この特徴としては、次の3つなどが挙げられます。

• 「目的」ではなく、手持ちの「手段」から生み出せる効果を重視する。
• 「予測」ではなく「コントロール」によって対処する。
• 予測や計画を重視する「コーゼーション」が通用しない不確実な状況でも有効である。

 コーゼーションとは、エフェクチュエーションの対義語で、予測によって精度を高めていくプロセスを重視する思考法です。たとえば、私たちマーケターが日々おこなっている「問題設定→インサイト洞察→価値設計→定量評価→STP」といった教科書的な戦略策定プロセスは、まさにコーゼーションに当たります。

「あれ？ マーケティングって、プロセスやフレームワークが大事ですよね？」と思った方がいるかもしれません。確かに、このコーゼーションのプロセスは基礎的な思考であり、再現性を高める上でとても大切です。

 一方で、ビジネスの現場では正しいプロセスを経たからといって必ずしも結果が出るとは限らないというのは、多くの方が感じていることではないでしょうか。手持ちの資源からアイデアを出して局面を突破する、リスクを取りにいくエフェクチュエーションという思考が結果を出すことに繋がるかもしれません。

 何より面白いのは、サラスパシー教授が研究対象とした27人の起業家から、同じ問題設定に対して18ものまったく異なる市場の定義が行われた点です。同じ問題でも、誰が向き合うかによって、答えが変わるということです。これはマーケター一人ひとりに、人とは違う未来をつくる資源が備わっている、ということを示唆していてとても興味深いですよね。


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