日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #53

あえてロゴはしっかり見せない? 世界観をメッセージした、サントリーと英国航空の常識破りな広告

 

ロゴマークの1/4しか見えていない英国航空の常識破り広告


 従来の常識からすると普通じゃないほどに、ロゴマークをきちんと見せてないことで、そのブランドがある世界観をみごとに表現した例が、英国にもありました。

 カンヌライオンズ2024でアウトドア部門ゴールド等を受賞した、英国航空(BRITISH AIRWAYS)の「WINDOWS」です。私自身、カンヌ現地での贈賞式で初めてこの受賞作を見た時に、“豊饒な内容を含んだシンプルさ”に貫かれている、と感じました。

こちらのサイトで「WINDOWS」を見ることができる。

 この事例は、主に英国の国内旅行を対象にしていて、機体の外から飛行機の窓を写し、そこから外を覗いている顧客がいる、というもの。機体に描かれた、社名であるBRITISH AIRWAYSは、その一部、1/4くらいしか見えて来ません。例えば、“BRITI・・・”の上半分くらい、といった具合に。それでも、いやだからこそ、むしろ“広告臭くなく”て、英国航空に乗って出かける旅情が強く伝わるのです。

 11のバージョンを、英国を縦断する形で324か所に掲示しました。カンヌライオンズ応募用の事例ビデオの中では、“NO”を幾つか並べる形で、「行動を促さない」「QRコードを表示しない」「ロゴも無い」「キャッチフレーズも無い」と、その型破りな“シンプルさ”を伝えています。イマドキの広告にありがちな“直接的な反応を取る”ことを徹底的に排除して、すでに超有名キャリアである英国航空と英国民とのエモーショナルな絆をつくり、そうすることで、LCCなど値段の安さを標榜する航空会社との差別化を図ったと言います。

 無理矢理にロゴマークをしっかり全部映し出すことをやめることで、英国航空で行く旅の“旅情”という世界観を、上手にメッセージできた事例と言えるでしょう。

 ロゴマークや商品シーンは、しっかりと見せなければいけない。広告業界は長い間、そんな常識で動いて来ました。でも、理由があれば、1/4だけ見せてもいいし、ボケボケの見え方でも良いのです。そんなフレキシビリティを持つことは、あなたのビジネスにも、何か新しい価値をもたらすかもしれませんね。
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