日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #54

「おつかれ生です。」で好調、意味を追わないアサヒビール「マルエフ」のテレビCM方法論

 

気分のシズルをユーモラスに描き切ったBeer Chase


 気分のシズルを描いた海外のテレビCMとして思いだされるのは、カールトンドラフトビールのBeer Chaseです。この90秒のテレビCMは、2013年カンヌライオンズで、フィルム部門ゴールドなどを受賞しています。

 ストーリーは、4人の若者がバーでカールトンドラフトを注文するシーンから始まります。無造作に足元に置いたバッグには、大量のお札が…。どうやら4人は銀行強盗を働いて来たばかりのよう。視線を店の奥に移すと、たまたま大勢の警官が寛いでいます。並々と生ビールが注がれたグラスを手に持ったまま、慌てて店の外に飛び出す4人。ここから4人と警官隊の“Beer Chase(ビール追跡)”が始まります。

 4人とも、なんとしてもビールをこぼれさせないようにと捧げ持ちながらも、全力疾走で逃げ続けます。警官の側も一生懸命に追いかけながらも、手に持ったグラスからビールがこぼれないように必死です。4人は途中バリケードで失速しながらも、やはり大事そうにビールグラスを持ったまま、なんとか乗り越えて行きます。

 最後には、跳ね橋形式の橋から飛び降りて、下の川を航行していた観光船に着地。警官隊は追って来られずに、4人はようやく美味しそうにビールを飲むことができて、めでたし、めでたし。

 いやぁ、僕自身がビール好きなのでよく分かるのですが、グラスに注がれた生ビールの一口目は、とにもかくにも大事にしたいんですよね。そんなビール好きの「気分のシズル」が、おもしろおかしく伝わって来て、マイフェバリットなテレビCMのひとつです。
 

「意味が分からない」という言葉は、たいていの場合ネガティブな意味で発せられます。しかし、ビールなどのある種の商品やサービスについては、時にあえて“意味を追わない”という方法も有効です。あなた自身のビジネスについても、そんな側面があるかもしれませんね。
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