マーケターズ・ロード 笹本裕 #03
数字だけで市場は見えない、マイクロソフト時代に学んだマーケティングの教訓【DAZN Japan笹本裕】
2024年2月、スポーツストリーミングサービスを手掛けるDAZN Japan CEO 兼 アジア事業開発に就任した笹本裕氏。同氏はこれまでMTVジャパン、マイクロソフト、Twitter Japan(現X)など、世界的な企業で要職を歴任。メディアとテクノロジー、エンターテインメント業界を中心にビジネスを牽引し、そのキャリアを築いてきた。現在はDAZNで、日本市場に加えてアジアパシフィック(APAC)での成長に注力している。
一見、輝かしいキャリアを歩んできたように見えるが、その道のりは決して平坦ではなかった。リクルートでの新人時代の苦労、起業への挑戦、マイクロソフトで感じた大きなギャップ、そしてTwitterで直面した破壊と創造…。2024年8月には、Twitterでの経験をまとめた書籍『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋)を上梓している。
本連載では、笹本氏が経験してきた数々の転機やグローバル視点で導いた成長と変革の実績、トップリーダーから学んだビジネスの本質、そして日本産業の未来について全5回で紐解いていく。第3回は、笹本氏のキャリアに焦点を当て、新卒で入社したリクルート時代から、起業やMTVジャパンでの社長時代を経て、マイクロソフトでの経験から学んだマーケティングの重要な視点について紹介する。
一見、輝かしいキャリアを歩んできたように見えるが、その道のりは決して平坦ではなかった。リクルートでの新人時代の苦労、起業への挑戦、マイクロソフトで感じた大きなギャップ、そしてTwitterで直面した破壊と創造…。2024年8月には、Twitterでの経験をまとめた書籍『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋)を上梓している。
本連載では、笹本氏が経験してきた数々の転機やグローバル視点で導いた成長と変革の実績、トップリーダーから学んだビジネスの本質、そして日本産業の未来について全5回で紐解いていく。第3回は、笹本氏のキャリアに焦点を当て、新卒で入社したリクルート時代から、起業やMTVジャパンでの社長時代を経て、マイクロソフトでの経験から学んだマーケティングの重要な視点について紹介する。
1日で名刺交換100枚を試みて得たこと
―― これまでのキャリアについてお聞きしたいと思います。最初に新卒でリクルートに入社されたところから教えてください。
1988年、新卒でリクルートに入社した際、私はまるで落ちこぼれを拾ってもらったような感覚でした。学生時代、米国NBCのニュース部門でアルバイトを経験し、将来は「日本と海外の橋渡しになるような仕事に携わりたい」という思いを持っていました。しかし、NBCの仕事に熱中するあまり、大学の授業にはほとんど出席せず、卒業できたことが不思議なくらいでした。
就職活動の存在に気づいたのは、大学のキャンパスでリクルートスーツを着た同級生たちを見かけたときです。自分も就職活動しなければならないと慌てて大学の就職課に行き、「海外」「情報」「メディア」といったキーワードで求人を探し、たまたまリクルートを見つけました。当時、リクルートは過去最大規模で採用活動を行い、1000人以上が入社した年でした。おそらく私は、その最後のほうで拾ってもらえたのだと思います。
DAZN Japan CEO 兼 アジア事業開発
笹本 裕 氏
2024年2月、DAZN Japan CEO 兼アジア事業開発に就任。日本でのマーケットリーダーとしてのポジションを確固たるものとしながら、アジアパシフィック(APAC)への拡大、DAZN Taiwanの事業成長を担っている。これまでの27年以上のキャリアで、テクノロジー、メディア、エンターテイメント領域でリーダーとしてビジネスを牽引。Twitter Japan株式会社では代表取締役として日本とAPACの成長を主導し、2014年の就任から9年間で本国アメリカに次ぐ事業規模を築く。エム・ティー・ヴィー・ジャパン、マイクロソフトといったグローバル企業・ブランドでの経験も豊富で、日本のみならずグローバルな視点で成長と変革へと導いてきた。現在も株式会社サンリオ、株式会社KADOKAWAで社外取締役を務めている。
笹本 裕 氏
2024年2月、DAZN Japan CEO 兼アジア事業開発に就任。日本でのマーケットリーダーとしてのポジションを確固たるものとしながら、アジアパシフィック(APAC)への拡大、DAZN Taiwanの事業成長を担っている。これまでの27年以上のキャリアで、テクノロジー、メディア、エンターテイメント領域でリーダーとしてビジネスを牽引。Twitter Japan株式会社では代表取締役として日本とAPACの成長を主導し、2014年の就任から9年間で本国アメリカに次ぐ事業規模を築く。エム・ティー・ヴィー・ジャパン、マイクロソフトといったグローバル企業・ブランドでの経験も豊富で、日本のみならずグローバルな視点で成長と変革へと導いてきた。現在も株式会社サンリオ、株式会社KADOKAWAで社外取締役を務めている。
リクルート入社後は1日で名刺100枚を交換するというミッションを与えられました。ビルの上から下までひたすら訪問して名刺を配っていました。いま振り返っても、この行動に意味があったのかは疑問に思います(笑)。しかし、この経験から探究心や忍耐力が養われました。
たとえば、1日で名刺100枚の交換を達成するためには、どのビルに入れば効率良く目標を達成できるかを考えざるを得ません。それを愚直にやり切る力も必要です。このような経験から第1回で紹介したイーロンの買収劇で、メンバーに対してポジティブな言葉をかけたように「出口のないトンネルはない」という考え方にもつながったかもしれません。