マーケティングは、街にどう貢献できるのか #04
渋谷は、全てを受け入れてくれる「ダイバーシティの街」になれるのか【渋谷未来デザイン 長田新子】
2018/10/12
再開発が進む渋谷、多様な声こそが価値
平日の夜、渋谷の街を歩いていたら、フェスでもないのに人が溢れかえっていて、歩くスピードがスローになる。どうしてこんなに人がいるのか。あまりにも多様な人がたくさんいて、わかってはいても毎回驚いてしまう自分がいる。”ちがいを ちからに 変える街。渋谷区”
最近、一緒に仕事をしているクリエイティブディレクターの佐藤夏生さんは、渋谷について「無関心な街だからこそ、ダイバーシティが担保される」と言い、クリエイティブエージェンシーのロフトワーク 代表の林千晶さんは「多様な状況を受動的に学習できる場所」と表現している。
私たちが先月、開催した街回遊型イベント「Social Innovation Week Shibuya(以下、SIW)」で、渋谷ダイバーシティエバンジェリストに任命された、りゅうちぇるさんは、「個性的な人がいても、その個性が許される街」と語っていた。
私は渋谷について「様々な交差から、新しいことが生まれる街」だと思っている。あのスクランブル交差点という場所に限定せずとも、いろいろな場面での交わりから生まれるものが街の魅力なのだ。
さて、先ほど触れたイベント「SIW」は、9月7日から17日の11日間に渡って開催された。しかしながら、その後も渋谷では、ビジネスとデザインを考えるミートアップやエリアマネジメントの全国シンポジウム、さらには旧東横線渋⾕駅のホームと線路跡地の再開発エリア「渋⾕ストリーム」がクリエイティブワーカーを魅了する場所として開業した。
この1カ月は、私にとって「渋谷」という温泉にどっぷり浸って、居心地の良さからのぼせてしまったり、あるいはお湯が熱くて飛び出したりしてしまうような状況であった。
その中で見えてきたのは、個性が強い人たちが渋谷について喧々諤々と議論して共有し合い、その後も継続的に考え続けていることだ。このことが、ものすごく面白いと思う。
全ての声がポジティブではないことも事実。工事中で歩きたくない、昔と比べて魅力が減っている、若者の街ではなくなった、と言ったコメントもある。
しかし、企業のブランドやマーケティングに置き換えてみると、これらの意見こそが貴重である。歯に衣着せないで、上下関係なく同じ立場で話ができることが、次への展開につながることは間違いない。
繰り返しになるが、そういう多様な人が集まっていることが、この街の最大の長所だと感じる。やはり「人が街の中心であること」も間違いない。