日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #55

サントリー 特茶の秀逸アウトドア広告「イマ、ソコにしかない面白さ」で価値を伝える

 

ロンドンの特設屋外看板、挑戦者が風雪の中24時間立つ


 掲載場所の特性をアイデアの核とし、新しい表現として使い切った海外事例として、「サバイバル・ビルボード」を紹介しましょう。このアウトドア広告は、2016年カンヌライオンズで、アウトドア部門ゴールドなどを受賞しています。

 2015年11月に行われたこのアウトドア広告は、当時の人気サバイバル・アクションゲーム「ライズオブ・ザ・トゥームレイダー」のリリースに当たって、過酷なゲーム世界の再現として実施されました。

 前月の告知に応募したファン数千人の中から選ばれた8人の男女が、特設看板に設けられた小さな板の上に24時間立ち続けるというもの。人工的に降りかかる雨や雪や風に耐えて最後まで残った挑戦者には、このゲームの世界を堪能できる旅行がプレゼントされます。

 この様子はストリーミング動画配信され、極寒の中8人に降り注ぐ雨や雪や風の種類は、動画配信を見ている人々の投票で決められました。アウトドア広告全体には、「SURVIVAL OF THE GRITTIEST(最も粘り強い者のサバイバル)」という文字がデカデカと書かれ、SURVIVALのUは一番左側に立っている男性挑戦者の身体に、OFのFは左から4番目に立っている女性挑戦者の身体に書かれているという具合でした。
 
「サバイバル・ビルボード」の事例ビデオ

 ネット上では1日で3万2000件ものコメントが寄せられ、多くの人が寝ずに彼らを応援したと言います。例えば、Fの女性挑戦者を応援して「FはFighterのFだ。行けるよ、君は!」との投稿や、隣同士になったTの男性挑戦者とSの女性挑戦者の様子を見て、「SとTは、このイベントのあと、デートに行くんじゃないか」などの投稿がSNS上で見られました。

 22時間を経過する頃には、多くの挑戦者が立っていた小さな板から飛び降りて脱落します。最後は2人だけが残り、いちばん左側のUの男性挑戦者があきらめ、小さな板をつたって右から2番目のTの男性に歩み寄り、健闘を讃えてハグをした後にリタイア。Tの男性挑戦者が勝者となります。結果として、1日で350万回見られ、通常の屋外広告の平均視聴時間が8秒のところ、平均視聴時間8分を記録したと言います。

 伝えたい内容と、一般的に有効と思われるその伝え方。広告コミュニケーションを企画する際の基本中の基本は、この2つです。ですが時に、掲載場所の特性という、もう1つの要素も使いこなすことで、より記憶に残る施策を行うことができます。実はいろいろな領域で、「もう1つ別の要素」にも想いを馳せてみることが、ブレークスルーのヒントになり得るのかもしれませんね。
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