2025年マーケティング業界の展望 #05
トップマーケターが語る2025年の展望【片山義丈氏、菅恭一氏】
2025/01/07
2025年が始まった。生成AIが日常に溶け込み、テクノロジーや社会情勢の激変に伴うマーケティングの変化も避けられない中で、事業成長を担うマーケターは何を見据え、目指せばいいのか。2025年のマーケティング領域における展望をトップマーケターが語る。
「数値化できない効果」を感じる力を磨く
片山 義丈 氏
ダイキン工業 総務部広告宣伝グループ長
ダイキン工業 総務部広告宣伝グループ長
生成AIの進化でマーケティングコミュニケーションにかかわる関係者全員が「アドベリフィケーション」への真摯な対応を、より一層意識しなければならない年になるでしょう。
さらにデジタルへの過剰な期待は変わらず、安易な「効果の可視化」「思考の停止」が、ますます進む流れはさらに加速しそうです。目の前にある「測定できるKPI」の達成が、本当にKGIに繋がっているのか? 将来的な顧客を育てるためには、重要でありながら「効果が可視化」できていないコミュニケーションにしっかりと投資できているか? を立ち止まって考えることが今まで以上に重要になります。
この時に必要なことのひとつが「目に見えない・数値化できない効果」を感じる力です。会社や自宅に閉じず、野に出ること、自分と異なる業界の人と交流すること、流行りものを試してみることなど、「野性といわれる創造性と直観」について、人間はより磨き続けていけるでしょう。
世界に目を向け、複眼的な視座を鍛える1年に
菅 恭一 氏
ベストインクラスプロデューサーズ 代表取締役社長
ベストインクラスプロデューサーズ 代表取締役社長
アメリカ合衆国はつくづく興味深い国だと感じます。日本に住んでいると、メディアで描かれるトランプ像はどうしてもネガティブな情報が多いように感じられます。しかし、昨年11月の大統領選挙では、共和党と民主党で米国が見事に真っ二つに分断される結果となりました。ここに日本からの偏った目線だけでは見えない「米国の真実」があります。
映画『シビル・ウォー』で印象的だった「What kind of American are you?」という問いは、米国社会に根深く存在する分断を象徴していると言われます。私も最近知ったのですが、米国は歴史的、文化的に異なる「11のNations」から成り立つ集合体であるという考え方があります。つまり、ひとつの目線から眺めているだけでは、理解できるはずもないのです。
これは米国に限った話ではありません。イスラエル、ロシア、ウクライナ、さらにはシリア情勢の再燃。地政学的な緊張が次々と高まる今、一方的な目線だけではなく、複眼的に物事を捉え、自らの見解を持つことの重要性が増しているように感じられます。
たとえば、身近な話題としてAIの活用について、マーケティング業界でもAIの利活用は重点課題になっています。しかし、目線を変えると、その背後には、もはや止めることができない電力消費量の加速度的な増加という問題が潜んでいます。ここに目を向けると、なぜイーロン・マスクがトランプ派に近づくのか、なぜビッグテックが軒並み原子力発電所を手に入れるのか、世界の動きと地政学的な背景がつながって見えてきます。このように、日々のマーケティング業務とは次元の異なる目線を持つことによって、私たちが捉える機会も広がっていくように思えます。
2025年は、世界に目を向け、複眼的な視座を鍛え、主体的に判断する1年にしたいと考えています。一人ひとりが物差しを増やし、自ら考え、行動することによって、より良い未来への選択肢がきっと広がるはずだと信じているからです。