2025年マーケティング業界の展望 #06
トップマーケターが語る2025年の展望【甲斐博一氏、大村和顕氏】
2025/01/08
2025年が始まった。生成AIが日常に溶け込み、テクノロジーや社会情勢の激変に伴うマーケティングの変化も避けられない中で、事業成長を担うマーケターは何を見据え、目指せばいいのか。2025年のマーケティング領域における展望をトップマーケターが語る。
マーケティングとPRが織りなすB2Bブランドの新時代
甲斐 博一 氏
ユニファイド・サービス 執行役員 CMO
ユニファイド・サービス 執行役員 CMO
早いもので、オリンピックイヤーも瞬く間に終わり2025年となりました。思い返せば、2024年は年間を通してAIと真剣に向き合い格闘した年でした。1年前と今では、自分自身とAI、とりわけ生成AIとの距離が大きく変化したことを実感します。この生成AI活用が2025年の1年間でどれだけ発展、浸透するかはマーケターのみならず、誰もが興味深く、そしてある種の期待感をもって新年を迎えていると思います。
そんな中、私が改めて今後の数年間にわたって注目したいのは、B2B企業ならではのブランディング、あるいはリブランディングです。サステナビリティやESG経営が謳われ、実践段階に入ると、改めてB2B企業のブランディングは社長の好き嫌いや余裕のある企業だけが挑むことではなくなりました。また、ここ数年を振り返ると、B2B企業の中でもこの分野にしっかり取り組むことで株価やPBR(株価純資産倍率)/PER(株価収益率)に対して好影響を与え始める企業も現れてきました。
そもそも「ブランディング」という言葉はすでにさまざまな意味合いで定義されていますが、私はこれを「人から想起されるもの」と捉えています。この定義に基づけば、社会に根差そうとするすべてのB2B企業にとって必要不可欠なものだと言い換えることができます。社会や地域を含めて、B2B企業も顧客やパートナーに限らず、すべてのステークホルダーから想起される必要があるのです。「うちは余裕がないから社会に根差す必要はない」とはもちろん言えません。どういう形態か、どれくらいのリソースを投下するかは別にして、これからを生きるB2B企業の必須命題であるように思います。そしてこの活動が連なることで、企業の資産につながることを信じて疑いません。
そんなB2B企業のブランディングを推進する役割がマーケティングというわけではなく、ここではあえてPRに注目したいと思います。社会から好意的に想起されることを考えると、マーケティングだけの役割ではなく、PRとマーケティングが先導役となり、経営陣とすべての従業員を巻き込み、社会や地域と共に共創していくことがこれからのブランディングだと捉えたいと思います。
マーケティングが差別化と独自性の創出を目指すのに対し、とりわけ戦略的PRは他者との協調を通じて新しい市場や価値観を創造していくことなのかもしれません。この2つの特性を上手にミックスさせた活動を展開し、社員と社会を一体化させながら、新しい価値を世の中に創造し続けていくブランディング活動こそが、今改めてB2B企業に課せられた課題のように思います。
AIでできること、できないことを冷静に見極める
大村 和顕 氏
ライオン ビジネス開発センター 本部長
ライオン ビジネス開発センター 本部長
2025年はAI活用の「場の広がり」に注目しています。
現在のAI活用は、テキストや音声、画像、映像など、人間が理解できるコンテンツを自動でつくり出す生成AIが中心です。これらは、ここ数年で言語モデルと画像生成技術が急速に発展したために実現できたと言えますが、2025年はさらにさまざまな場面でAIが活用されるようになっていくと考えます。
すでに出始めていますが、ターゲットとなる生活者やペルソナを描き、その人格をAIに組み込んで、仮想のターゲットとして意識調査や行動観察を実施するなど仮説検証として活用していく様な使い方。また、本格発売の前段階にスモールな規模で実施するテストマーケティングのすべての要素にAIを組み込み、自動でさまざまな検証ができるプラットフォームの登場。このように、未来の市場予測や市場の変化原因分析などでの活用も進むと思います。
すべてのマーケティングプロセスをAI(自動)化することができれば非常に楽ではあります。しかし、人間の頭や目でしっかりと判断するプロセスをすべて捨てて成功に導けるとは考えにくいので、AIと人間の役割分担についても2025年以降は大きな議論が巻き起こっていくと思います。
AIでできること、できないことを冷静に見極め、今の時代に最適なマーケティングプロセスへの変革、改良を推進していくことが重要であると考えます。