2025年マーケティング業界の展望 #07

トップマーケターが語る2025年の展望【山口有希子氏、風口悦子氏】

前回の記事:
トップマーケターが語る2025年の展望【甲斐博一氏、大村和顕氏】
 2025年が始まった。生成AIが日常に溶け込み、テクノロジーや社会情勢の激変に伴うマーケティングの変化も避けられない中で、事業成長を担うマーケターは何を見据え、目指せばいいのか。2025年のマーケティング領域における展望をトップマーケターが語る。
 

AI時代のマーケターだからこそ、ELSI感度を高く

 
山口 有希子 氏
パナソニック コネクト 取締役 SVP CMO

 2024年は投資詐欺広告やMFA(Made for Advertisement)サイトなどデジタル広告における問題が、より大きな社会問題となり、総務省が「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」を実施するなど、本格的な取り組みが行われた年でした。今年は行動指針となるガイドラインが発行をはじめ、さらなるアクションが予定されています。

 AIをはじめとするテクノロジーの進化は面白いです。今まで出来なかったことが可能になることはワクワクします。しかし、そのツールは使い方次第で人や社会に悪影響を及ぼしてしまいます。しかもカンタンに。

 2025年、AIのさらなる進化に伴い、新たなマーケティング手法が普及していくでしょう。法律が技術の進化スピードに追いつかなくなる中で、改めてマーケターの倫理的・法的・社会的課題(ELSI=Ethical, Legal and Social Issues)への感度がより重要になります。

 企業がどのように顧客や社会と共にあるべきなのか、実施しているマーケティング活動はオーセンティックであるのか。私自身も常に問い続けたいと思います。
 

テクノロジー偏重の中で求められる価値

 
風口 悦子 氏
JTB 執行役員 ブランド・マーケティング・広報担当 兼 CMO

 AIの可能性やその活用は必然であり、どのように使いこなし、生活者からもAIを通じてどのように選ばれるかを視点に含んだコンテンツ設計や情報戦略が必要となっています。一方、テクノロジーをしっかりと活用し課題解決をするためにも、人の創造力、共感力、対人関係力を養うことがさらに重要になっていると感じています。そんなAIの時代であるからこそ、人や地域、文化が交わることで、共感や、新たな価値が生まれる、そんな人の力と地域の力に私は興味を持っています。

 JTBグループは「交わる先に、あらたな未来」を掲げ、旅行業から「交流創造事業」をドメインとする企業への変革を、事業変革とブランディングの両輪で推進しています。市場の変化やお客さまの行動の変化に適応し、未来の成長を継続するために、事業ドメインをアップデートする企業は今後も増えるでしょう。かたや、これまで培ったお客さまとの信頼関係の深化、そしてこれからの、グループ全体での長期的な関係性が、企業にとってその競争力を左右する重要な鍵であることは変わりません。

 小集団化し、パーソナライゼーションが高度化する市場において、お客さまの実感価値を定量的に分析し、価値の共創と向上を追求していくことで、多岐にわたるJTBグループの事業の解像度を上げることにも繋がると考えています。また、サステナビリティ推進をはじめとする社会的意義がブランド価値の核心となり、環境・社会・人権や倫理に配慮したマーケティング施策が、テクノロジー偏重の中でもより一層求められていくと思います。

 

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