新時代のエンタメ舞台裏~ヒットにつなげる旗手たち~ #15

「ME:I」ら輩出のLAPONE崔信化社長の反対に負けない信念と『LAPOSTA』に込めた狙い

前回の記事:
「JO1」「INI」などZ世代に人気のアーティストを続々輩出。 LAPONE社長 崔信化氏が実行した「これまでにない選択」
 日本の音楽・映画・ゲーム・漫画・アニメなどのエンタメコンテンツが、世界でも注目されることが多くなった昨今。本連載は、さまざまなエンタメ領域の舞台裏で、ヒットを生む旗手たちの思考を noteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦氏が解き明かしていく。

 日本最大級のサバイバルオーディション番組として大ヒットした『PRODUCE 101 JAPAN』(以下『日プ』)。今回は、『日プ』を通して「JO1」「INI」「ME:I」などZ世代に注目されるアーティストを生み出したLAPONE ENTERTAINMENT、LAPONE GIRLS(以下、LAPONE)の 代表取締役社長 崔信化(チェ・シンファ)氏に取材した。

 同社は日本の吉本興業と韓国のCJ ENMの合弁会社として2019年に創立。6年目にして複数の人気グループを輩出し、アーティストの素材配布やグッズによる新曲展開など斬新な取り組みを通して、ファンとの強いエンゲージメントを構築してきた。短期間で急成長を遂げた舞台裏に迫った前編に続き、後編では代償を覚悟したというコロナ禍との戦いや、2025年1月27日~2月2日に東京ドームで開催する『LAPOSTA 2025 Supported by docomo』に込めた崔社長の狙いを聞いた。
 

他社と同じことはマイナスでしかない


徳力 2024年4月にはオーディション番組『日プ』のシーズン3となる『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』から「ME:I(ミーアイ)」がデビューしました。Z総研の調査では2024年上半期のZ世代トレンドランキングで1位に躍り出るなど、デビューしたてとは思えない勢いでしたね。ガールズグループ専門の育成・マネジメント会社「LAPONE GIRLS」も設立されていますが、ボーイズグループと考え方や成功のポイントが違うのでしょうか?


  
©︎LAPONE GIRLS

 基本的には同じですが、ガールズグループは概して、ボーイズグループよりもファン層が広がりやすいという特徴があります。ファン層の志向など、違いを踏まえたマネジメントは必要です。

徳力 ボーイズグループはファン層が深く強くなるのに対して、ガールズグループは広がりやすい。その点も意識されて、LAPONEの中でも各グループの方向性やマネジメント方法を差別化しているのですね。

『日プ』で印象的なのは、デビューを逃した練習生もすごく人気が出ることです。別のグループに行ったり、他のオーディション番組にまたチャレンジしたりして、番組終了後も若い世代を惹きつけています。
 
note noteプロデューサー/ブロガー
徳力 基彦 氏

崔 そうですね。『日プ』は一度見ると、とにかくハマりますよ。番組を経ることでファンの熱量が非常に高まった状態でデビューすることができています。

徳力 一方、晴れてデビューしたLAPONEのアーティストたちは、従来のアイドルとは一線を画すユニークな取り組みをされているように思います。たとえば2023年7月に配信した「JO1」のシングル『NEWSmile』のリリースは、CDを販売するのではなく「CD GOODS(Charming Daily Goods)」として楽曲の世界観を盛り込んだ日用品や雑貨に、音源にアクセス可能なQRコードを付けて販売するという方法をとりました。
  
期間限定のリアル店舗「JO1 MART」や公式ECサイト「LAPONE STORE」で販売された「CD GOODS」(現在はECストアでのみ販売中)

これが凄いのは、楽曲をダウンロードするわけではないので音楽チャートランキングの集計にはカウントされないことです。どのような背景があったのでしょうか?

 「グッズで音楽を聴けるようにする」というのは実は、かなり早い段階からスタッフから提案があり、アイデアとして非常に面白いと思っていました。ただ、既存のグッズ販売との違いや、音楽や世界観との繋がりなど完成していない部分があり、課題をクリアして実現しました。日本では斬新な販売方法だったので話題になったほか、CDの生産・廃棄にかかるエネルギーや資源を削減する取り組みにもなっています。

徳力 先ほど「新しい会社だから常に他社がやらないことを考えている」「ファンに怒られることも多い」とおっしゃっていましたが、チャートに反映されないのに敢えてやるところがLAPONEらしいし、ファンの熱量もかえって高まるのですね。

 スタッフにいつも言っているのは、「話したい時はいつでも社長室に入ってきてください」ということです。外から見ると馬鹿らしいアイデアでもいいんです。僕らはまだ設立6年目ですから、組織力という面では大手に敵わないところがあって、そこがファンから見ると怒られてしまうことも多々あるのですが…。ただ、組織として完成しきっていないからこそ、新しくできることをきっと僕らは持っている。それを実現するには、どんな意見もちゃんと聞いて尊重しながら、展開していくことがポイントだと思います。
 
LAPONE 代表取締役社長
崔 信化 氏

徳力 なるほど。「JO1」とサンリオとの「新キャラ開発プロジェクト」というコラボレーションでは、「JO1」メンバーがサンリオピューロランドで研修したり、コンセプト会議を経てラフ画をつくったりして、『JOCHUM(ジェオチャム)』というキャラクターを生み出していましたね。最初は「一体何をやっているのか」と思ったんですが、アイテムやアニメ、曲まで幅広く展開しておられて、驚きました。こういった斬新な取り組みも、ボトムアップの風土から生まれたのですか?

崔 そうですね。他社と同じことをやっても、僕らの会社にとってはマイナスしかありません。もちろん、アイデアが常に成功するかどうかは、蓋を開けてみないとわからないことがほとんどです。でも、だからといって挑戦しないという選択肢は、僕の中にはないんです。挑戦し続けてほしいと、アーティストやスタッフにも言い続けています。
 
「JO1×サンリオ新キャラ開発プロジェクト」の公式YouTube動画。メンバーが真剣にキャラクター開発に取り組んでいる様子。
 

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