創造的思考の源泉とマーケティング #07
「オール良し」は受け入れられない。日清食品のカオスなテレビCMに隠された論理とおもしろさ【日清食品ホールディングス 宣伝部長 米山慎一郎氏】
リクルートでクリエイティブ・ディレクターとして広告を制作し、武蔵野美術大学では社会人の創造的思考育成プログラムの講師も務める萩原幸也氏が、創造的思考を駆使してビジネスシーンで活躍するプロフェッショナルと対談し、アイデアの源泉やマーケティングにつながる考え方を解き明かしていく「創造的思考の源泉とマーケティング」連載。
第4回は、日清食品の宣伝部門を率いる日清食品ホールディングス 執行役員 宣伝部長の米山慎一郎氏が登場。インターネットミームをふんだんに盛り込んだ「カップヌードル」のWebCM「ミルクの音 篇」をはじめ、インターネットやSNSで度々話題になる日清食品のCMはどのようにして制作されているのか。
前編では、おもしろいCMを制作する上で意識すべき右脳と左脳の使い分けやおもしろさを追求するための宣伝部の組織体制、日清食品の広告に対する考え方などについて紹介した。後編では、広告を見ている人の捉え方や佐藤可士和氏と手掛けた「カレーメシ」初代テレビCMの秘話、「論理」と「おもしろさ」のスイッチを切り替える重要性などを詳しく紐解いた。
第4回は、日清食品の宣伝部門を率いる日清食品ホールディングス 執行役員 宣伝部長の米山慎一郎氏が登場。インターネットミームをふんだんに盛り込んだ「カップヌードル」のWebCM「ミルクの音 篇」をはじめ、インターネットやSNSで度々話題になる日清食品のCMはどのようにして制作されているのか。
前編では、おもしろいCMを制作する上で意識すべき右脳と左脳の使い分けやおもしろさを追求するための宣伝部の組織体制、日清食品の広告に対する考え方などについて紹介した。後編では、広告を見ている人の捉え方や佐藤可士和氏と手掛けた「カレーメシ」初代テレビCMの秘話、「論理」と「おもしろさ」のスイッチを切り替える重要性などを詳しく紐解いた。
「広告もマーケティングも、もっといえば経営も、デザインだ」
萩原 過去、日清食品の安藤徳隆社長がインタビューで「現代アートに近い感覚でCMをつくっている」とおっしゃっていました。それは日清食品のみなさんの中に共通認識としてある感覚なのでしょうか。
米山 「漠然としてある」という感覚ですね。その記事は、たしか2022年頃に掲載されたものですから、時が経てば言うことも変わりますし、目の前の話す相手によっても変わると思います。
社長が明確に言葉にしているのは、「広告もマーケティングも、もっといえば経営もデザインだ」ということです。それは私たちも共通認識として持っています。
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日清食品ホールディングス 執行役員 宣伝部長
米山 慎一郎 氏
1969年兵庫県生まれ。1995年神戸大学工学部卒。1995年に日清食品株式会社入社。岡山営業所、マーケティング部、宣伝部、経営戦略部などを経て、2018年より日清食品ホールディングス 宣伝部長に就く。日清食品グループ各社のプロモーション活動全般のマネージメントを行う。
米山 慎一郎 氏
1969年兵庫県生まれ。1995年神戸大学工学部卒。1995年に日清食品株式会社入社。岡山営業所、マーケティング部、宣伝部、経営戦略部などを経て、2018年より日清食品ホールディングス 宣伝部長に就く。日清食品グループ各社のプロモーション活動全般のマネージメントを行う。
萩原 それはどのような意図でおっしゃられたんですか。
米山 さまざまな意味があると思いますが、経営では優先順位や相反することがいろいろある中、それをきちんと整理した上で社員や世の中を動かすためにどうアウトプットするか、その戦略を立てることが必要ですよね。それも、デザインだと考えているんです。
社長が「現代アートに近い感覚でCMをつくっている」と言った記事の中に、コンテキストの掛け合わせだと書かれていたと思いますが、それもデザインだと思います。アートの中にはいろいろなメッセージがあって、その掛け合わせをどのようにアウトプットしていくかを、まさに右脳と左脳をスイッチしながらデザインしていくんです。