プロマーケターの倫理と資本主義の精神~広告苦情50年の歴史から~ #02

苦情1位は新聞。広告費詐欺など横行、業界の自主規制進んだ草創期【JARO 川名周】

前回の記事:
売上と倫理、どっちを取りますか?「広告苦情50年史」から考えるプロマーケターの素養【JARO 川名周】
 消費者の声を起点に問題のある広告を自主規制する民間の機関、日本広告審査機構(以降:JARO)。この連載では、設立から50年にわたってJAROに寄せられてきた広告苦情の歴史(「苦情の50年史」)を振り返るとともに、今も昔も繰り広げられる広告と倫理のせめぎ合い、そしてプロのマーケターに求められる「倫理性」について、考えていきたいと思います。

 初回では「プロフェッショナル」という言葉が持つ歴史的背景から導き出される、プロマーケターに必要とされる素養を示しました。

 第2回の本稿からは、具体的にJAROに寄せられた広告苦情を年代別に概説していきます。問題のある広告や、それに対する苦情はどのように移り変わるのか? 用語や法律名などややこしく感じることもあるかもしれませんが、現代の私たちを取り巻く広告環境に繋がる話です。自分に引き付けてご覧ください。
 

「苦情の50年史」を公開


 1974年10月15日に設立されたJAROは創立50周年を記念して、この50年間に寄せられた苦情や意見をまとめた「苦情の50年史」を、2024年に公開しました。
   「苦情の50年史」サイトURL:https://50th.jaro.or.jp/history/

「苦情の50年史」は単年度ごとのデータと10年単位の総括で構成されており、これまではJAROの会員社専用ページを中心に提供してきた苦情などの情報を、50周年を機に広く社会に還元する目的で、Webサイト上で紹介しています。
 
1974年度~2023年度の受付件数の推移

 受付件数は1974年度の54件からスタートしました。以降の数年は3桁の受付数でしたが、JAROの認知率が上がるとともに受付数も増え、1980年度からは1000件を超えました。年間1万件を超えたのは2017年度以降。直近の2023年度には1万874件に達し、過去最多は2020年度(コロナ禍)で1万5100件を記録しています。50年間の総受付件数は約26万件にのぼります。

 受付方法も時代とともに変化しました。当初は電話や手紙に加え、FAXが利用されていましたが、2009年度からオンライン受付が試験導入され、2014年度より正式にオンラインフォームが加わったことで、受付件数も急速に増えていきました。

 ここからは10年ごとの苦情の傾向と、それに対する広告業界や社会の対応を見ていきましょう。

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