マーケティング・ビジネス課題を解決する学術研究 #03
ChatGPTやGeminiなどの生成AIで人間の創造性は本当に高まるのか? マーケターが壁打ち相手として意識すべきポイントを解説
生成AIは「他者」として認知されるのか?
先ほど紹介した認知科学の実験は興味深いものですが、この実験における「他者」はいずれも人間でした。では生成AIを相手にした場合も、同じようなことがいえるでしょうか。私たちは生成AIチャットのような人間ではないものを「他者」として認知するのでしょうか。
この論点については、すでにいくつかの研究によって「認知する」ということが明らかになっています。たとえばLee, Lee, & Sah (2020)の研究において、私たちはチャットに対して「心」を知覚し、そのことによって直接的に、あるいは親近感を持つことを介して、より利用意向が高まるという傾向が実証されています。
とすると、今後生成AIチャットにおける実証的な研究が待たれますが、今回紹介する認知科学の実験における「他者」の存在に関わる結果は、生成AIチャットに対しても適用できそうです。だとすると、次のような疑問も湧いてきます。そこに「他者」がいれば、そこで交わされる対話の内容はなんでもいいのでしょうか。
※後編 生成AIはマーケターの創造性をどう拡張する? その役割はイノベーターか、それともアーリーアダプターか へ続く
【参考文献】
阿部慶賀(2019)『創造性はどこからくるか: 潜在処理, 外的資源, 身体性から考える』 共立出版。
清河幸子, 伊澤太郎, & 植田一博 (2007)「洞察問題解決に試行と他者観察の交替が及ぼす影響の検討」『教育心理学研究』 55(2), 255-265.
Lee, S., Lee, N., & Sah, Y. J. (2020) “Perceiving a Mind in a Chatbot: Effect of Mind Perception and Social Cues on Co-presence, Closeness, and Intention to Use.” International Journal of Human–Computer Interaction, 36(10), 930-940.
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