CATCH THE RISING STAR #28
レトロフェア「喫茶ファミマ」立案の若手マーケターが気づいた「ボンヤリしたコンセプトだとボンヤリしたものしかできない」【大谷萌氏】
2025/03/06
- 人材育成,
企業におけるマーケティングの重要性が増す一方、「マーケターの仕事はAIに奪われるのでは」とも囁かれる昨今。そんな変革期に、マーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。
Agenda noteでは一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。幼少期からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第28回はファミリーマートで入社8年目となる大谷萌氏が登場。子会社から本社マーケティング本部に配属され、「ファミマル」立ち上げに携わっただけでなく、自らの企画が採用された「喫茶ファミマ」を生み出したホープだ。しかし舞台裏では知られざる苦労があったようで…。「ファミマファンを増やす」ミッションに向けて企画力を光らせる大谷氏の素顔に迫った。
Agenda noteでは一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。幼少期からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第28回はファミリーマートで入社8年目となる大谷萌氏が登場。子会社から本社マーケティング本部に配属され、「ファミマル」立ち上げに携わっただけでなく、自らの企画が採用された「喫茶ファミマ」を生み出したホープだ。しかし舞台裏では知られざる苦労があったようで…。「ファミマファンを増やす」ミッションに向けて企画力を光らせる大谷氏の素顔に迫った。
「ファミマル」立ち上げに参画
―― ファミリーマートに入社されたのは2017年ということですが、最初からマーケティング本部に配属されたのですか?
最初は子会社の「ファミマ・ドット・コム」(現ファミマデジタルワン)に入社し、チケット関連の業務に従事していました。就活では「小さいけどやりがいのある職場に入りたい」と思って会社探しをしていて、縁あって入社しました。
ただ、もともと企画を考えるのが好きだったので、業務とは関係のない企画を勝手に考えて上司に提案していました。たとえば、韓国でアイドルのオーディション番組が流行っていて日本でも注目され始めていたので、アイドルを目指す人にファミマのストアスタッフとして働いて生活費を稼いでもらいながら、レッスンを受けてもらうという企画を考えました。実現はしませんでしたが、他にも色々と提案しました。
そんな姿勢を買ってもらえたのかどうかは分かりませんが、2020年からファミリーマートのマーケティングを担当する部署に配属されました。

大谷 萌 氏
ファミリーマート マーケティング本部 メディア&プロモーション改革推進部 メディアグループ
ファミリーマート マーケティング本部 メディア&プロモーション改革推進部 メディアグループ
―― 求められなくても積極的に企画を出すところが評価されたのかもしれませんね。2020年といえば、ファミリーマート初のCMO足立光氏が入社(※)した時期と重なります。異動後はどんな業務をしましたか。
※ファミリーマート初代CMOに就任 足立光氏、入社を決めた3つの理由【インタビュー】
異動した直後は、ファミリーマートがマーケティングの傘の下でPR戦略を強化しようとしていた時期でした。私はマーケティングについてもPRについても全くの素人だったのですが、当時、当社にもPRの専門人材はいなかったので「まずは自由にやってみて」と任され、イチからPRやリリースの書き方を勉強しました。
会社としてオフィシャルに出すものなので、広報部門の方に統一すべきルールを教えてもらいつつ、マーケティングと絡めてパブリシティーを獲得していくには、コーポレートの情報発信をする広報とは違うアプローチが必要になってきます。最初は勉強しながら、とにかくリリースをたくさん出して、効果検証しながらノウハウを蓄積していきました。
―― 印象的だった業務はありますか?
日々のPR業務をこなしながら、個別のプロジェクトやキャンペーンにも関わっていたのですが、特に印象的だったのは2021年10月にローンチしたプライベートブランド「ファミマル」の立ち上げに参加したことです。ブランド名を考えたり、ロゴ候補をたくさん並べて選定したりするときも立ち会いました。どういうブランドにするか、コンセプトづくりから議論し、800種類を超える商品ラインアップから担当者の意見を取り入れ、コアバリューに落とし込んでハニカムモデル(※)をつくりました。ブランドを生み出すのにこれほどの時間とお金と手間がかかるんだと、衝撃を受けました。
※電通ハニカムモデル:コアバリューを中心とするブランディングの構成要素の集合体をハニカム(蜂の巣)にたとえたフレームワーク。電通が活用することで知られる。
ローンチ前には「負けていたのは、イメージでした」という新聞広告も打ちました。関東在住の100人にブラインドテストをしてもらい、業界1位のコンビニのハンバーグとファミマのハンバーグを食べて、どちらが美味しいかを聞きます。食べる前のイメージでは圧倒的に業界1位に負けていたのですが、実際に食べると「ファミマのほうが美味しい」という意見が多数になりました。負けていたのは味ではなくイメージだった、という内容です。続けて「そろそろ、No.1を入れ替えよう」という交通広告も出し、SNSやテレビなどで話題になりました。
「比較広告」を出すのはチャレンジングでしたが、広告の内容や文章は、広告会社や社内メンバーと議論しながら決めました。無事に話題化して「ファミマル」をローンチできたときは、めちゃくちゃ嬉しかったですね。
―― 刺激的な経験をしましたね。大谷さんがメインで進めたプロジェクトもあったのですか?
2024年のGWに展開した、ゴディバ監修のチョコレートフラッペのフェアでプロジェクトマネージャーを担当しました。2021年から毎年続いている期間限定キャンペーンなのですが、ここであらためて学んだのは、すべての媒体に一貫性のあるメッセージを伝えることの大切さです。どのターゲットを狙うかで、パブリシティーが獲得できる媒体や文脈は違います。たとえば店頭の看板にはこのビジュアルやコピーを使おうとか、SNSだともう少し書き込めるからシズル感のある表現を使おうとか。統一的な横軸を通しつつ、ターゲットや媒体別に微妙にコミュニケーションを変えていく実務は、普段、リリースを書くだけだとなかなか経験できません。プロジェクトマネージャーとして全体を見ることができてよかったと思っています。